家に帰った日
なにがあったというのか、家に戻った日。
大事な人達が居なくなっていた。
つらそうに泣いている侍女の1人ジューンを捕まえて話を聞くと、それは恐ろしい事件のあとだった。
「わかりません。本当に分からないのです。
突然全員が広間に集められました。
そして、厨房の全員、庭師たち、侍女の半分、男性従者の半分、そして騎士団の殆どが突然出てゆくように執事様から命じられました。
恐ろしいことに、次の就職のために、必要な紹介状もなしに抵抗する暇さえありませんでした。みな荷物をまとめて今月の賃金を持ち、縋っても…騎士様の手で……わたし、私は。おいてゆかれました」
グズグズ泣くジューンの言葉に頭が真っ白になる。
カーラの顔も見ていない。カーラはどうなったというのか。
「ねぇカーラは?」
「彼女は、解雇になりました。理由はわかりません。本当に分からないのです」
そのまま大声で泣き崩れるジューンにはこれ以上なにも聞けなくて、大急ぎで立ち上がり旅の疲れも癒えぬまま、私は執務室へ走った。重厚なお父様の普段お使いになっている部屋につくと、1人の護衛がいた。
無視して、扉を叩こうと手を振り上げると、その手を取られる。
「離れなさい!お父様に話があるのよ!!私は、私はこの家の2番目の娘なのお父様に会わせて!」
「ご当主様の指示です。部外者は入れません」
そう言って冷たくこちらを見ていた。その冷たい目に覚えがあって私は固まった。そうだ、この目は価値のないものを見下す貴族の目だ。どうして良いのかわからなくなる。私はお父様とお母様が結婚してこの家に引き取られた。お父様のお姫様なのに、どうしてこんな扱いを受けるのか。
「お、お父様に会わせて」
「なりません。お話が終わりましたらお声をかけさせて頂きます」
「でも!!急ぎなのよ!!」
「しかし…」
「入っていただいて大丈夫とのことです。ご許可がでました」
そう言って中からくたびれている様子の男が1人現れた。その男が言うとようやく、騎士が手を離し、また姿勢を正す。押しのけるように、執務室内に入ると、そこにはお父様と、あの農園に居たはずのユリウスさんがいた。
「え?なんでユリウスさんが?」
「アン!!お前ユリウス様になにを!!」
「静かにしてくれ、僕は、疲れている」
「は、はい。アン、こちらに私の横に座りなさい!」
「え?」
「はやく!」
急かされたお父様の必死の形相に面を喰らいながら、慌ててお父様の横に腰掛けると、書類を見ているユリウスさんがゆっくりとその書類から顔を上げて、書類を机においた。
「聞きたいことがあるようだ。このあともうるさく騒がれても困る。手短に終わらせてくれ」
静かにこちらを見て笑っているが、なんで彼がこんな態度なのか分からない。お父様を見ると、額の汗を必死にハンカチで拭いていた。
なににそこまで緊張しているのか分からないし、なぜユリウスさんをユリウス様というのか分からない。聞きたいが今は、それどころではないことをもいだして、ぎゅっと膝の上で手を握って、ユリウスさんを睨んだ。




