国の希望②
あの本のことだ。
「せ、セドリック様!もしかして、あの本って!」
「確信はない。でも、ここの本を少し流しで題名を読んだけど、土地の改良とか、麦の発育と改良とか、そういった本が並んでいた。
もしかしたら、ローゼリンデ夫人も色々と今の国のあり方に疑問を持って、考えていたのかもしれない。
どうしても、僕はその答えを知りたい」
そう言って立ち上がると、私をおいてセドリック様が急ぎ足でお姉様の部屋に向かっていた。
「開けてくれ!お願いだイリスティア!
どうしても確認したいことがある!お願いだ開けてくれ、頼むから話を聞いてくれ!
話をしてくれるまで、僕はここで待ち続ける覚悟がある!
イリスティア!!!」
縋るようにドンドンと部屋のとを戦いながら叫ぶ、悲痛な様子のセドリック様を応援する。流石に一緒に戸を叩くのはできないので私にできることはお姉様にセドリック様の思いが届くことを願うのみだ。
しばらくセドリック様が呼びかけていると、静かな声が聞こえてきた。
「煩いと言っているでしょう。騒がないでちょうだい。
一体何事なのですか?もうお帰りかと思っておりましたのに」
ゆっくりと、お姉様の部屋の扉が開いた。
私も廊下の角から慌てて飛び出してセドリック様の横に並ぶと、お姉様が嫌そうに眉をひそめた。
「お姉様お願いです。先日見せてくださったあのノートをもう一度見せてください!」
「イヤよ。本当にしつこいわね」
「そんなことを言わないでくれ、このとおりだ。イリスティア!
本を見せてくれ!」
必死に食い下がるが、お姉様の表情は変わらない。
「あれは私物だと言ったでしょう?
なぜ貸さなければならないの?
理解できないわ。」
ゆっくりと扉を閉めようとするお姉様の手首を掴んだ。
びっくりしたようにお姉様が目を見開く。
「でも!でも!!あれは伯爵家の図書館にありました。あれは伯爵家のものであるなら、お姉様の私物とは言えないはずです!!
だから見せてください。お願いします、お返ししますから!」
「嫌だと言っているの。」
「なぜだ!どうしてそう僕を拒否するんだイリスティア、僕たちは、長年の付き合いのある婚約者だろう?!」
「だからよ。だから嫌なのよ。
それに、貴方たちのように礼儀のない人たちに大事なものをわたして、無事に帰ってくると思えないわ。
手を離してちょうだい。話は終わりよ」
そう言って冷たくわたしを見たあと強引に手を引くと、お姉様がバタンと扉を締めた。その扉は何度呼びかけても二度と開くことはなかった。
セドリック様は肩を落としたまま帰ってゆく。
だが私はこの家の娘。
まだ、チャンスは有る。
部屋の間でじっと待っていて、食事を持っていったときに一緒に次女と入ってしまえば、もう一度お姉様と話す機会があると思って待っていたが、ジューンが食事を持ってきて戸を叩いても「いらない食べたくない」と拒否して開くことはなかった。
夜食ぐらい食べるかも、と淡い期待をしてじっと待っていたけど、夜食も拒否していた。どれだけ食が細いのよ。ほぼ1日1食を食べるかどうかのお姉様は、本当な精霊か何かで、空中の魔力でも食べて生きてるんだろうかと死にそうな空腹を抱えて部屋に戻ると、苦笑いしてる私の専属侍女が用意してくれていたパンを見て、思わず涙が出てしまった。
ありがとうカーラ。




