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キングの怒り(再掲)  作者: 皆中明
清水田学園のキング
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異変5

「例え事故としてこれ以上の調査が不要だったとしても、生徒が飛び降り自殺をするほど思い詰めていたのであれば、それは調査すべき事ではないのですか? というより、そこまで思い詰めるようなことがあったのを把握していないことに問題がありませんか? それもせずに緘口令を敷けと言われても、僕は納得出来ません」


 光彰のその言葉に、第十一寮の寮長である小野がぴくりと反応を示した。この件は幽霊騒ぎが大きくなりすぎて、温田見への配慮が行き届いていない。そのことに、誰よりも彼女が心を痛めている。


 だからこそ、彼のためにも本当に彼が自ら飛び降りたのか、それとも事故なのか、若しくは「時計塔の千夜」が関わっている呪いなのか……。そのあたりを明確にするためにも、きちんと調査をすべきだと主張していた。それは、光彰の意見と一致している。


「僕は温田見とそれほど仲が良かったわけではありませんが、少なくとも僕の目には、彼が自ら死を選ぶほどの悩みを持っているようには見えませんでした。ですが、だからと言って事故と結論づけるには早すぎるように思います。時計塔での転落事故は、これが初めてではありません。これほど繰り返しているのに、何の対策も取られていません。それは、本当は事故では無い何かがあって、でもそれを隠したいから事故だということにして隠したのではないかという憶測を呼んでも仕方がないと思うのですが、違いますか? その辺りの疑問をスッキリさせるためにも、せめてこの件、温田見の件だけでも、きちんと調べて下さい。その上での結論であれば、僕らは黙って受け入れます」


 光彰の主張に、他の寮長たちも頷き始めた。


「それはだから、先ほども言ったとおり……」


 しかし、恵那はまたしてもそれをのらりくらりと躱そうとする。それに痺れを切らした小野が、唇を引き結んで前へ出た。


「——あの」


 小柄な彼女は、自分よりも大きな存在である校長を見上げ、射るような視線で睨みつける。そして、静かに怒りを滲ませた声で語りかけた。


「校長先生、この件がもし事故では無く自殺だったらどうなるのでしょうか。そして、もし飛び降りた原因がいじめだったとしたら、どうなるでしょう。その可能性を見過ごすことは、学校側の過失になるはずです。それに、最上くんも言ったように、時計塔にはこれまでも色々と問題がありました。それをそのままにしていたのは、学校です。事故でも大問題なんです。生徒の安全を守れなかったのに、責任を取らずに逃げるような事をしないでください。もっときちんと調査をして、責任の所在も明らかにして下さい」


「お願いします」と頭を下げる小野の目は、涙に濡れていた。そうなる前から、そこは真っ赤に腫れている。


 彼女は温田見のご両親の許可を得て、彼の亡骸と対面していた。その後はずっと泣いていたらしい。それを見るだけで、彼女の心の痛みがそのまま伝わるような色をしている。


 この恵那への言葉は、彼女が自分自身へ向けたのものでもあるだろう。温田見がこれほどに深い悩みを抱えていたのだという事に気がついてあげられなかった後悔が、彼女を潰してしまいそうなくらいに苦しめている。温田見とある関わりのあった光彰には、それが痛いほどに伝わっていた。

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