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キングの怒り(再掲)  作者: 皆中明
清水田学園のキング
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異変1

 時計塔には、学校設立当初から幽霊がいると噂されている。いくつかあるその噂のうち、一体の少女の霊だけには名前があった。それが「時計塔の千夜」だ。


 三年前、高等部三年に在籍していた並木千夜という生徒が、時計塔から飛び降りた。その霊がこの土地に未練を残して成仏しきれず、地縛霊となって彷徨っていると噂されている。殆どの者が、それを信じていた。


 この学園の生徒であれば、並木千夜のことは誰でも知っている。彼女が在籍していた当時の姿を残した写真を、今でも見ることが出来るからだ。それは、学校に飾ってある校内イベントの写真の中にある。彼女は、被写体としてよく選ばれていたのだ。その理由は、写真を見ればすぐに分かる。


 クリーム色に輝く長く美しい髪と、真っ白で艶のある肌、そして、すらりとのびた手足。身長も当時の女子生徒の中では高めで、写真は全て弾けるような笑顔を捉えている。彼女は、集団の中でも一際目を引く華やかさを持っていた。


 そして、この彼女の容姿が、時計塔に当時からいるという地縛霊に似ていたのだという。学校に棲む霊と、同じような外見を持つ生徒。それがいつしか混ざり合い、時計塔には並木千夜の幽霊が出るという話へと変わっていった。この時点で、噂は既に事実と異なることが分かっている。それでもなお、時計塔の幽霊は並木千夜だという説が強固に信じられていた。


 しかし、この説にはもう一つ大きな落とし穴がある。そもそも、「時計塔の千夜」をはっきりと見たことがある者はいなかったのだ。それを、今回市岡が初めて見たということになる。黎は、その事に大きな苛立ちを感じていた。


 この三年の間にたった一人の証言しか得られていないのに、葉咲はその市岡の証言を全面的に信用し、それを根拠に光彰が温田見殺しの犯人に違いないと言い切っているということになる。そのあたりで、葉咲の人間性が見てとれる。これは、ほぼ言いがかりの様なものだ。そんな理由で他人に殺人の疑いをかけるとは、あまりにも幼稚な行いと言えるだろう。


「大体、呪い殺すってなんだよ。光彰は誰かを殺したいほど憎んだりしないんだよ。どうでもいい人間にはそもそも興味を持たないし、もし誰かに自分にとって不都合な事をされたとしたら、その問題を解決する事に専念して、それ以外は全部忘れるんだよ。あいつはそういう奴だ。最上の人間が、向けられる悪意や敵意にいちいち嫉妬や妬みを覚えてたら、キリが無い。葉咲なんて、そういうの何も知らないくせに……」

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