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キングの怒り(再掲)  作者: 皆中明
清水田学園のキング
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悪い噂7

 小物であるが故に、こうしてすぐに手のひらを返されてしまう。葉咲は、自らの失態に気づくと、悔しそうに唇を噛んだ。


「大体さあ、温田見が飛び降りた時って、キングは教室にいたじゃない。無理でしょ、時計塔にいる人を突き落とすなんて」


 そうだそうだと黎が心の中で呟いていると、葉咲はなぜか途端に目をぎらりと光らせた。そして、ここぞとばかりに今一番大きなネタと思われる話を披露する。


 その内容に、黎はひどく動揺してしまう事になる。


「そう、そうなんだよ。だから、こっからが俺の情報がすごいって話なんだって。キングの怒りを買うと、時計塔の千夜が呪い殺しにくるんだって言われてるんだよ。市岡は、温田見が千夜に誘われるように落ちて行ったって話してるらしいぞ。幽霊に誘われて飛び降りるなんて、そんなの呪いとしか思えないだろう? つまり、それが『キングの怒りを買うと、千夜に呪い殺される』って事なんだってさ。すげーだろ? あいつ、人を呪い殺すんだぜ」


「——え、何だそれ……。マジか?」


 それを聞いて、その場にいた生徒は一瞬呆気に取られた。そして、葉咲の得意げな顔を眺めつつその意味を理解すると、一様に悲鳴を上げ始める。


 時計塔の千夜自体は、全ての生徒の知るところではあったが、それはただの噂であって、彼女は本当は存在しないと思われていたからだ。呪い殺されるような霊がいる場所が、逢瀬の場所として利用されていたのだとしたら、そこに行ったことがある者にとっては、それは恐ろしいだろう。


「やだ、千夜ってそんな感じのやつなの?」


「怖ーい! 絶対キングに怒られないようにしないと! 呪い殺されるなんて嫌よ!」


 その場にいた生徒がそう騒ぎ始めたタイミングで、黎はその場を立ち去った。


——なんだそれ。


 階段を降りて昇降口へと向かうと、靴を履き替えて一人で寮へと向かう。彼の胸の奥には、蠢くように張り付いた嫌な感情の澱が生まれていた。

 それがどういうものなのかは分からない。しかし、不快なものであることは確かだった。


——光彰が千夜を使って、人を呪い殺す……?


 その言葉が、彼の頭の中をぐるぐると回り続けていた。

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