悪い噂6
刺激を求めているクラスメイト達は、そんな彼の言うことでも知りたくて仕方がない。葉咲を取り囲むようにして彼に迫ると、胸を躍らせた。
「そうなんじゃねえの? キングの怒りを買ったら死ぬって言う噂が、先生たちの間で回り始めてるらしいからな。それに、あいつならやりかねないだろ? いっつもスカした顔しててさ。柳野と八木以外の人間のことは、まるで汚物みたいな目で見てるじゃねえか。そんな奴らの命なんて、あいつにとっては虫ケラ以下だろうから」
その言葉を聞いて、黎はまた胸元を掴んだ。湧き上がる怒りを、その場所に留めなくてはならない。自分が勝手に光彰の意に沿わないことをしてはならないのだと、必死に自分に言い聞かせていた。
しかし、彼はこういう事が起こるたびに考えてしまうのだ。幼馴染を罵られても、こうやって我慢しなければならないならば、彼自身の気持ちは一体どうすればいいのだろう。自分は嫌だと思っているこの気持ちを、無かった事にし続けていれば、いずれ何も感じなくなるのだろうか。
——早く慣れてしまいたいんだけどな。
そう思いつつ、既に二年が経過している事に気づき、思わずふっと吹き出してしまった。
「えー、さすがに殺しはしないんじゃないの? いくら大企業の御曹司とはいえ、それはまずいでしょ。むしろ今の時代だと、そういうことをすると、親の立場が危うくなっちゃうからさ。会社だって潰しかねないでしょ? いくらなんでも、そんな事はしないんじゃない?」
時にはこういうまともなことを言う者もいる。そういう意見を聞いて、溜飲を下げることができた時は、ラッキーだとすら思えた。
「でも、あいつ人が怪我とかしても平然としてるだろう? 課外活動中に事故を目撃した時だって、血だらけの被害者を見ても何も感じてなさそうだったもんな。ものすげえ量の血が出てて結構グロい状態だっただろ? あれ、俺は失神しそうなほど悲惨な状態だったんだぜ。それなのに、あいつはやたらに冷静で、その姿がむしろ恐怖でさ。背筋がゾゾゾってしたよ」
それでも、葉咲はまだ調子に乗っているのか、光彰へのさらなる悪評を広めようとしていた。思いつく限りの悪い噂を披露しようとしているのだろう。
ただし、そこはやはり小物で考えの足りないところが露呈する。クラスメイトたちは、揶揄う相手は誰でもいいと思っているのだから、瞬時に葉咲が餌食になってしまうこともあるのだ。
「いやいや、それはお前が情けないっていうだけの話だろう。その話だと、キングは冷静で凄かったって事になるんだよ。貶めたいんじゃないの? それじゃアイツのいい話じゃねーか。本当バカだよな、お前」




