悪い噂5
そうしているのは、大抵が親の金の力によって進学先も既に決まっている連中で、よほど暇を持て余しているのか、連日同じことを繰り返しては、必死になって青春を謳歌しているふりをしていた。
それはいつものこの学校の、ありがちな光景ではある。黎にもそれは分かっていた。大した事ではないのだと言い聞かせて、この場から離れるべきなのだろう。それくらい、彼も分かっているに違いない。
しかし、彼はどうしても今の発言だけは聞き流せなかった。ドアの外から彼らを伺うようにして、その会話へと耳をそばだてていく。
「情報提供者が誰かは言えねーんだけどな」
もったいつけるようにそう言っているのは、噂好きで知られる葉咲輝だ。彼は学校でも寮でも勝手な行動をとることが多く、問題児扱いされている。
しかし、彼は誰からも咎められる事はない。校長の恵那の甥である彼に、厳しい指導をする教師はいないのだ。
「そんなの、お前が言うんだから、校長かその周辺の先生だろ? いいよなあ、いつも面白い情報回してもらえてさ」
「本当だよね。まだみんなが知らないようなことも、葉咲はいつも知ってるもんなあ」
クラスメイトたちは、葉咲に賞賛の目をむけている。黎はそれを見ていると、ぞくりと背筋が冷え、体が震えた。なんて悍ましい光景なんだろうか。そう考えながら、目眩と吐き気を覚える。
「おいおい、俺は誰とは言ってねーぞ。まあ、どうせ言えないから、そうやって想像して楽しんでもらってたらいいんだけどな」
——あいつ、なんて嫌な顔をするんだ……。
よせばいいのに興味に負けてしまい、黎は葉咲の表情をしっかりと見てしまった。得意気な笑みをを浮かべる姿は、どう見ても下衆としか言いようが無い。
彼は、ある意味では光彰と同じように生きている。周囲の大人たちから丁重な扱いをされており、振る舞いによってはまた彼の評価も変わるのだろう。
しかし、その傍若無人ぶりを考えると、光彰とは比べ物にならないくらいに器が小さいように思えていた。その悪印象が、あまりにも際立ってしまっている。
タチが悪いのは、本人はそれを全く自覚していないということだ。彼自身は、光彰と自分を対等だと考えているため、一方的にライバル視しているような状態だ。
「で、どういうことよ。学校は本当に温田見はキングを怒らせたから殺されたって判断してるってこと?」




