想いの深さ2
「温田見の様子がおかしい? どんな風に?」
そう話している途中で、次の授業の始まりを知らせる鐘が鳴った。黎が教壇の方へ振り返ると、既に英語担当の教師が登壇しており、授業の準備を始めている。
「やべっ、もう始まるな」
「そうだな。ちゃんと前を向いておけ」
「はいはい。授業はちゃんと受けますよ」
そう言いつつ前を向こうとしていると、教壇から「始めますよ」という言葉とじっとりとした視線が黎の背中に突き刺さる。
「すみません」
黎は教師に応えつつ、慌てて授業の準備をする。そんな幼馴染の姿を眺めつつ、あてられたクラスメイトが読み上げる英文をぼんやりと聞きながら、光彰は温田見のことを考えていた。
あれが事故だと言うならば、なぜ彼は時計塔に行ったのだろうか。その理由はいくら考えても分からない。そして、もしそこへ行った理由が自殺をするためであったとしたなら、彼はどうして死ぬ必要があったのだろうか。それも分からない。分かっているのは、彼は転落して亡くなったという事実だけだった。
——小野が言っていることが本当なら、温田見は何か悩みがあって、思い詰めた挙句の自殺だということなんだろうか……。
そう考えるのが妥当かと思いつつ、ため息を吐きながら、黒板の文字をノートへ書きつけていった。
光彰と温田見は、それほど仲が良かったわけではない。ただ、他の自堕落な生徒たちに比べて、温田見厚という人物の真摯に生きていくその姿に、彼が心を打たれる事が多かったのだ。
あまり深く親交があったわけでは無いから、光彰にもはっきりとは言い切れない。しかし、温田見は小野をとても大切にしていた。それは周知の事実だ。そしてあの性格からして、彼が彼女を置いて死のうとすることなどあるのだろうか。
——あの温田見が、そこまで追い詰められるような何かがあったということか……。
そう考えるしかないのだろうとは思っても、それが何であるのかがこの狭い学園内で見えてこないという不自然さが、どうにも気に掛かっていた。
そんなことを考えながらも与えられた課題をこなし、成績優秀な彼はそれをあっという間に片付けてしまう。次第に暇を持て余し始め、窓外へと目を移すと、グラウンドの方から女子生徒の甲高い声が響いてきた。




