逢瀬の話3
「あはっ。悪い、つい指差しちゃうんだよな、俺……」
そう言ってスッと引かれた黎の手が机上に乗ると、光顕はそれにそっと自分の手を重ねた。そして、徐にその指に自分の指を絡ませると、握ってはその力を緩めてという行動を繰り返す。
「ちょっ、何してんの!」
狼狽える黎に、光彰はすました表情で答えた。
「また指さされたら困る」
そう言って、また黎の手を握りしめる。
「——お前が言いたいのは、学校側が何度施錠しても、密会したい奴らがその度に鍵を壊してたって話だろ? 確かに噂になってたな。それは俺でも知ってる。あんまり続くから、学校側が根負けしたと聞いてる。罰でも与えて止めさせるべきだったと思うんだが、それはしなかったらしい。何か事情があったんだろうが、その時にきちんと対応しなかったんだから、校長が責任を取るべきだと俺は思うけどな。生徒が亡くなってもそれから逃れようとするなんて、到底信じられないことだ」
彼はそう言うと、ぎりっと歯を鳴らし、激しい怒りを滲ませた。
「恐ろしいくらいに根性が腐ってるもんね、ここの先生たち。確かに、そういう責任については隠すつもりかもなあ。……でもそれよりもさあ、光彰。俺は気になってるんだよね。なんで温田見くんは時計塔にいたんだろう」
問われて、光彰は首を傾げた。そう言われれば、そもそも温田見がそこにいなければならなかった理由が、彼には思い当たらないらしい。
「確かに、そう言われればなんでなんだろうな」
黎も同じようだ。無意識に光彰の手をしっかりと握り直し、身を乗り出すようにして彼へ問う。
「なあ、わかんないよな。だって、時計塔って今は使われていないだろう? 今年から生徒数が減って、あそこは確か全部空き部屋になってる。だから誰かに会いに行ったわけでも無いだろうし、幽霊も出るのにさあ……」
清水田学園は全寮制だ。
男子生徒は第一寮・第二寮・第三寮に、女子生徒は第十一寮・第十二寮に部屋を持つ。ただ、ここ最近の生徒数減少を受けて、今年度から第三寮は廃止された。これまでそこにいた生徒たちは、全て第二寮へ移動させられている。
もともと幽霊騒動があったため、第三寮には近づきたがらない生徒が多く、ほぼ空き部屋だった。そのため、見回りのこなくなったその場所へ、素行の悪い生徒たちが集まっているという噂もある。
「それにあの場所ってほら、夜はその……そういう話もあるだろう? ——え、もしかして温田見くんも彼女と待ち合わせをしてた……?」
黎はそう言いながら何かを想像してしまったのか、突然頬を真っ赤に染めた。そして、想像したことを頭の中から追い出そうとしているのか、突然激しく腕を振り回し始めた。その腕が光彰の頬を掠める。




