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キングの怒り(再掲)  作者: 皆中明
清水田学園のキング
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逢瀬の話2

「そうだな。ここの教師は本当に変な奴しかいないから、それで済ませることも十分あり得る。——もしかしたら、寮長にその注意喚起をさせるつもりなのかもな。『寮長から寮生達に時計塔に近づかないように言いなさい。自主的に注意させなさい。危険な場所に近づかなければ、事故は起きません。学校の手を煩わせないようにしましょうね』って。そうやって、お得意の責任転嫁をするつもりなのかも知れないな」


 うんざりした様子でそう言う光彰の言葉に、黎が一瞬何かを閃いたような表情を浮かべる。そして、人差し指をすっと差し出し、ある教師が生徒に向かってするお馴染みの仕草を真似して見せた。


「『君たち、時計塔には近づいてはいけませんよ』って言いながら、未就学児にするみたいに『メッ!』とか言うんだろ?」


 それは、このクラスの担任がいつもやることだ。


「やめろよ、黎。お前のその真似、似過ぎてるんだから……」


 三年一組には、多額の寄付金を寄せている家の生徒と、成績優秀者が集まっている。このクラスは、全員進学予定で、どれほど成績が悪かろうとも、学校が寄付の恩恵を受けているならば、大学部へと進むことが約束されている。


 それはつまり、寄付額が多い家庭の子女で成績や素行が悪い者も含まれる事になり、教師はそれを統制することを目標としていないような人物が当てられている。要はやる気がなく、一年間をやり過ごすことを最大の目的にしているような人物だ。だから、時折生徒に注意喚起をすることがあったとしても、子供に言い聞かせるようなことしかしない。黎は今、それを完璧に真似して見せていた。


「まあ、そうだろうな。その程度のことしかしないんだろう。金儲けと、楽な方へ逃げることしか考えてない奴らばっかりだからな」


 そう言って、珍しく光彰が無邪気に笑っている。それに気を良くした黎は、人差し指と親指で輪を作り、その上下をひっくり返して見せた。


「これ? 好きだよね、先生たち」


「やめるんだ、黎。下品だぞ……」


 光彰はそれを見てまた同じように笑った。二人の笑顔に、午前の柔らかな太陽の光が差す。その光はみずみずしい肌によって弾き返され、その造形の美しさを伝えていった。

 十七歳の二人の少年は、寝不足であってもなお光り輝くエネルギーに満ちているようだ。


「まあ、冗談はさておき。本当に温田見が転落死していたのに、それがニュースにもならなければ、学校側に何か落ち度があったから隠したいっていうことなんだろうな。階段室の施錠を忘れてたとか、屋上の柵が壊れてるのに修理してなかったとか、そういう安全配慮義務に違反してるところがあるんじゃ無いかと思うぞ」


 それを聞いた黎が光彰を指差し、突然


「あ、あった! あったぞ、そんな話!」


 と叫んだ。


 光彰は目の前に差し出された人差し指を睨むと、呆れたような顔をしてそれに噛み付くふりをする。そして、わっと驚いて手を引っ込めた黎に、


「指差すな」


 と言いながら、歯をカチカチと鳴らして笑った。思いもよらない光彰のコミカルな行動に、黎はくしゃくしゃになる程相好を崩した。

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