第二寮長 八木和希5
そんな二人を眺めていた八木が、声をあげて笑い始めた。
「ねえ、いつも思うんだけど、君たちってそこまでが一連の流れだよね。最上くんがデレて、柳野くんがそれに怒って、最上くんは更に強気で愛を叫ぶ。そして、最後は必ず柳野くんが黙ってしまう……そこまでがワンセット。僕ね、それを見るのが大好きなんだ。でも知らなかったな。そうやって毎日やり取りが続いてるのは、最上くんの努力なんだね」
「そうだ。言い返して来るうちは、黎もこのやりとりを楽しんでくれてるだけだから、大丈夫。一応加減はしてるからな」
「加減しなかったらどうなるわけ?」
「……そりゃあ、手を出すんじゃないか? だって毎日同じベッドで寝てるんだぞ?」
「あ、そうだったね。君たち寮長室で同室だから……。ベッドが二つ入らなかったんだったよね、確か」
「ああ。散々告白させておいて返事ひとつせずにいる幼馴染と、毎晩同衾してる」
「……光彰っ! そんな言い方するなって、いつも言ってるだろ!」
黙っていようと思っていたはずの黎が、たまらずにまた口を挟む。その様子を見て、八木は更に声をあげて笑った。
「柳野君がそうやっていちいち反応するからだよ。完全に面白がられてるじゃないか」
普段大人しく、滅多に笑い声を上げない八木が爆笑していることで、再びクラスメイトたちが騒ぎ始める。八木のファンを公言している生徒達が、彼らを指差し始めた事で、彼は席を立った。控えめな生活を好む彼には、これ以上の注目は我慢ならないのだろう。
「じゃあ、僕はこれで。最上くん、伝えたからね。放課後は職員室へ寮長は全員集合。よろしくね」
そう言うと、八木は自分の席へと戻っていった。
「ああ、ありがとう」
光彰が答えると、八木は背中を向けたまま、ひらりと手を上げてそれに応えた。




