第二寮長 八木和希4
「——なんでだろうな、横柄であることに変わりはないけれど……。まあ、顎で指すよりはいいだろう」
光彰は彼のその様子を見て、嬉しそうに相好を崩す。八木はそんな二人のやりとりを眺めながら、くすりと笑った。そして、楽しそうに
「仲がいいな」
と呟く。
「え、そうか? 普通だろう?」
黎が八木にそう尋ねる。すると、光彰が真剣な面持ちで
「いや、俺は仲良くい続けられるように努力はしている。だからそう見えて間違いはないだろう。俺は黎を愛しているからな。こいつに嫌われたら生きていけない。だから、そうならないように毎日必死だ」
と口を挟んだ。
「おっ、お前っ……」
それを聞いた黎は、顔を真っ赤にして憤り、光彰の口へとへと手を伸ばして塞ごうとした。ただ、運動能力でも黎に勝る光彰は、その手に触れる事も無く、するりと優雅に逃れていく。
獲物を捕まえきれずに行き場のなくなった手を、机に打ち付けて大きな音を立てながら、黎は更に顔を赤らめて叫んだ。
「もーお前、何言ってるんだよ! そういう冗談言うなよ、八木くんが困ってるだろう? 彼みたいな真面目な人には、そういう冗談は通じないんだから」
その言葉に、光彰は不服そうに口を尖らせる。
「いや、黎こそ何を言ってるんだ。俺は冗談は言ってない。いつもお前が冗談にしたがってるだけだろう? 嫌なら離れて行けと何度も言ったはずだ。それでも離れて行かないんだから、これくらいのことは覚悟しておけよ」
「だから、どういうつもりでそんなこと言ってるんだよ! それを本気で受け取ったとして、俺にどうしろって言いたいんだ」
「本当に嫌なら、こっぴどくフってくれればいいだけの話だ。お前はそれをしてない。それなら、望みがあると思って頑張るしかないだろう? だからそうしてるだけだ」
「っ……」
そう言われて返す言葉の無くなった黎は、何も言わずに前を向いてしまった。光彰はそんな黎の姿を見て、なぜか愛おし気に目を細めている。




