第二寮長 八木和希3
「それで、ご想像通りに教頭先生からの伝言なんだけど。今日の放課後、全寮長に通達があるらしいんだ。だから寮に戻る前に職員室に寄って欲しいんだって。全寮長と管理職の教員が対象らしいよ。校長先生からお話があるんだって」
「通達? 初日に珍しいな。まあでも、今日と言ったら、間違いなくアレだよな」
光彰はそう言って時計塔の方角を顎で示した。
あの塔の下に温田見が倒れていたという話は、生徒の間では朝からずっと話題の中心に居座っている。新学期初日に寮長を呼び出してする通達など、普段はそう無いことだ。それが全寮長を呼び出してまでする内容とあれば、間違いなくこの件だろう。
「まあ、そうだろうな。そうだろうけれどさ、光彰。ちょーっと今のやり方は横柄に見えるから、やめておいた方がいいぞ」
光彰の前の席に座っている黎が、背もたれへ抱きつくように座ってそう口を挟んでくる。
「横柄な態度を取らないようにって、兄さんにいつも言われてただろ?」
黎のその言葉に、光彰は目をむいた。
「横柄? そう見えたのか?」
「顎で何かを指し示すのは、横柄にしか見えないんだよ」
「ああ、そういえば……」
光彰の反応に黎は呆れた。
育った環境のせいなのか、本来の気質なのか、光彰は行動の一つ一つが横柄に見えがちだ。
ただ、本人にはまるでそういった意図が無く、自分がどういう行動をすることでそう言った誤解を受けているのかを理解していない。昔は黎の兄である千晃が都度それを指摘してあげていた。
しかし、ここには千晃はいない。ここに入学してからは、代わりに黎がそれをするようになった。
以来、そうされる度に光彰はこうして臍を曲げ、あからさまに不服そうな表情を浮かべる。それはひとえに黎に嫌われたくないという思いの現れなのだが、黎の方はそれに気がついていない。ただ人に間違いを指摘されて拗ねているのだと思っているので、彼が今とっている態度もまた良くないものとして指摘を受けるのだった。
「確かに、以前千晃にも顎で指し示すのは横柄だと言われた事があったかもしれない。そうか、じゃあ……こうすればいいのか?」
そう言うと、彼はスッと伸びた美しい人差し指を時計塔の方へと向けた。大好きな黎に叱られて拗ねたままではあるが、彼に嫌なやつだと思われたくないという気持ちには抗えないのだろう。むすっとしながらも態度を改めようとする彼を見て、黎は首を傾げながらも納得する様子を見せた。




