第二寮長 八木和希1
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温田見の遺体が発見されたという話は、生徒の間でもあっという間に噂となって広まっていった。
学校中が落ち着きを無くす中、受験を控えている三年生の心中も穏やかではいられない。
他の学年はこの混乱を自習時間に変えられたようだったが、光彰たち三年生は、残り少なくなっている授業を滞りなく終わらせなくてはならない。救急車やパトカーのサイレンや赤色灯に動揺を隠せないながらも、通常通りにカリキュラムは消化されていった。
「最上くん」
二時間目が始まるまでの僅かな休憩時間に、光彰は珍しく黎以外の人物に声をかけられた。窓の外をぼーっと眺めていた光彰に声をかけたのは、同じクラスで第二寮の寮長を務めている八木和希だ。
八木はインドア派で、滅多なことでは人前に出たがらない。成績は優秀だが性格が内向的で大人しく、わがままで自己主張の激しいタイプの多い寮生たち……特に男子生徒からは、その存在を軽んじられているところもある。
しかし、実はそんな八木は一部の女子生徒に人気がある事も知られている。その理由は、単純に外見がいいからだと言われていた。
控えめな態度と大きなメガネに隠されがちだが、実は勝ち気で自信に満ち溢れた印象的な目つきをしている事も気を惹かれるらしい。その上、細身だが意外と筋肉質で力も強い。
寡黙で優しく穏やかな上に、知力・身体能力共に優れている。それが、親の財力で成り上がった者の多いこのクラスの中では、一際輝いて見えるのだと女子生徒たちはいう。
そして、八木はその勤勉さから、生徒だけでなく大人にも好かれている。教師や食堂の調理師、配膳担当のスタッフ、事務員、さらには、時々訪れる理事会の関係者にさえファンがいるという噂がある。
一般の高校生ならば、これだけ恵まれたものを持っていると、やや自惚れた性格になってしまいそうではあるが、彼は何かを悟っているかのように落ち着いており、目立たない生活を好んでいた。
では、そんな彼がなぜ寮長をしているのかといえば、ありがちだが、周囲に押し付けられてしまったからだ。寮長決定の際の光景は、ともすればいじめととも取られてしまいそうなものだったと、光彰も聞いている。
そんな状況で決められた仕事であっても、八木は全てをきちんとやり遂げる。押し付けられたことを一切言い訳の材料にしないというころが、彼の最大の魅力だった。




