第十一章 株価乱高下 3
次の日、研史は藤波さん宅へ行く。藤波さんの車を研史が運転。藤波さんの奥さん、佳子と羽田空港へ向かう。
羽田空港に到着して到着ロビーで待っていると、藤波旦那さん、正和が飛行機から降りてくる。
研史は思わず走って藤波正和のところまで行く。今にも泣きそうな顔で。
「伯父さん、助けてください!」
「おい、どうしたんだよ!研史」
「株が、株が、」
「株が?・・・売買か、売買で失敗したのか?いくらだ、いくらつぎ込んでいくら損失出したんだ?おい研史!」
すると大きな声で周りのみんなから注目されてしまい、佳子が止めに入る。
「ちょっとあなた、大きな声出さないで。みんなが見ているでしょ、はずかしい!行くわよ、フルーツサンド」
3人は羽田空港内のフルーツサンドのお店に入る。
「俺はマスカットにするかな」と正和が言うと奥さんは、
「うん、いいとこ行くわね。私はやっぱりマンゴーね。研史君、遠慮しないで好きなの選んで」
「それじゃあメロンにします」
「メロンもいいわね。飲み物は?」
奥さんの質問に対して正和は、
「俺はコーヒー」
研史も「あ、僕もコーヒーで」
「ちょっと、ちょっと。フルーツサンドにはフルーツティーでしょ!」
正和は「いやコーヒーで」
研史も「俺もコーヒーで」
「まぁいいわ、私はフルーツティー」
佳子は店員さんを呼び、注文をする。
研史は今までの経緯を話す。そして注文したフルーツサンドと飲み物が届き食事を取りながら会話は続いた。
話を聞いて驚いた佳子は研史に質問する。
「それにしても、なんでそんなギャンブルもやらない真面目な人が株に大金注ぎ込むような事したんでしょうね?」
「なんか株の投資方法を勉強したみたいで、シオダサンポーだっけ?」
フルーツサンドを持つ正和の手が止まる。
「・・・聞いたことあるぞ。塩田参法。確か、塩田なんとかとかいう人が江戸時代に米や麦の相場で莫大な富を得た。その極意を記した本があると。そしてその極意は株式投資にも応用して使えるように書かれてある」
「つまり金河さんはその塩田参法の極意を基に株意識投資をしているという事か。莫大な富を得る極意なら儲かるんじゃないですか?」
「いや、株はそんな簡単なもんじゃない。その企業の経営は安定しているか。最近の株の動きはどうか。世界経済はどうか。色々なものを見て判断しなければならない。塩田参法の法則だけで株式投資をやっていたとしたら無謀だよ」
「ミートフードサービスの株は今後どうなるんですか?」
「ファーストフードのように気軽にステーキを食べるというコンセプトが受けてどんどん業績が上がっていった。そしてニューヨークに出店したことによってニューヨークの投資家がミートフード株をどんどん買いに走った。驚くくらい株価は上昇した。
でもここまで人気が出ると他店が黙っていない。いつでもステーキのような店がいくつか出来ている。いつまでも独り勝ちというわけにはいかないだろう。そろそろピークではないかな。しかしこればっかりは蓋を開けてみないと分からない」
「う~ん・・・」
研史は困った表情をして顔を下に向けてしまう。
「その金河さん、株価を見て暴落した時の事が頭をよぎって、それがフラッシュバックして倒れて入院しちゃったんだろう。いちばん大切なのはお金じゃない。体だ。
ミートフードサービス株はすぐに全部売却するべきだ。そしてしばらくは残りの保有株に関しても株価は見ない。
娘さん2人が社会に出た後、またマイホームを手に入れる機会があるだろうよ。もちろんマイホームが手に入らないと幸せじゃないなんて事もないだろうし」
「そうですね。今の金河さんに株価は見せちゃいけないですね。ミートフードサービスの株、すぐに売却するよう言います」
帰り3人で車に乗り、研史は新橋駅で降ろしてもらう。
別れ際、正和は研史に聞いてみる。
「金河さんの入院している病院は何処の病院?」
「赤羽中央病院です」
「赤羽中央病院に入院している金河浩さんか」
研史は新橋駅前で藤波夫妻と別れて電車で帰る。
自宅へ戻ってから幸栄に電話をする。
「精密検査の結果はどうでしたか?」
「特に大きな問題はなかったの。やはり大きなストレスが原因だと考えられるそうよ。先生にはもう株の事は考えさせてはいけないって言われたわ」
「金河さんは今どうしています?」
「寝ているわ。このまま様態が悪くならないようなら明日の夕方にでも退院ね」
「証券会社の叔父さんと話をしたのですが、ミートフードサービスの株、明日以降上がるか下がるか分かりません。
それよりも大事なのは金河さんの体です。
明日、ミートフードサービスの株を売却したほうが良いと思うんです。
なので明日、自分も病院へ行きます」




