第十一章 株価乱高下 2
金曜日、浩は今日も会社を休む。
一軒家を失い家族と別居。多額の借金と精神的にだいぶ参っていると思われる。
午後5時、研史は仕事終了。
(金河さん、体調どうだろう?電話してみるか)
研史は浩のスマホに電話をかける。
「もしもし金河さん、体調はどうですか?」
「あぁ研史か。悪いな休んじゃって。風邪ひいちゃったみたいでさ、でも来週は行けると思う」
「無理しないでください。月曜日、体調悪かったら休んで構わないですからね。
ところで金河さん、ミートフードサービスの株の株持っていましたよね」
「ああ持っている。何株だっけ?株価を見ると目がチカチカしちゃうもんで、最近ぜんぜん見ていないや」
「ミートフードサービス、上がっているんで体調がよくなったら見てみてください」
「そうか。分かった。それじゃあ」
浩は布団に入って寝る。
次の日の朝、浩は起きる。体調はだいぶ良くなった。ミートフードサービス株価が気になり確認する為、スマホを手に取る。
トイレへ行く為、部屋を出る。トイレから出てきて寮の食堂に座る。
寮の管理人・平柳のおばさんが心配して浩に話し掛ける。
「金河さん、大丈夫?体調は良くなった?」
「ああ、少しは良くなったよ」
浩はスマホで株価をチェック。しかし・・・株の動きを見た浩は、ブリディッシュテクニカル株価暴落の悪夢を思い出した。手が震える。
平柳は、浩の手が震えるのを見て(どうしたんだろう?)と思ったが、ちょうど郵便局員がくる。
「郵便でーす」
「ご苦労様」
「あ、金河さんにも手紙着ているわよ」
平柳が浩を見ると、浩は手を震わせながら床に倒れていた。
「ちょっと!どうしちゃったの、救急車?」
床に落ちてあるスマホの画面を見ると株価が表示されていた。
浩のことが気になった研史は自転車でマルコー寮へ向かっていた。すると救急車が研史を追い越していった。研史が寮に着くと寮の前に救急車あり。平柳のおばさんも寮の前に出ていた。
「研史君、たいへんたいへん!金河さんが倒れちゃったのよ」
「金河さんの風邪ってそんなにひどかったんですか?」
「いや、風邪はだんだん良くなったって言っていたんだけど、なんかスマホの画面を見ていたら手が震えて倒れちゃったみたい」
「スマホの画面?」
「株価を見ていたみたい」
病院と連絡を取っていた救急救命士が受け入れ先を見つける。
「赤羽中央病院で受け入れ出来るそうです」
「じゃあ研史君、一緒に乗って。私は奥さん、あと所長にも電話しておくから」
「分かりました」
浩は赤羽中央病院へ運ばれる。
少しして幸栄が赤羽中央病院に到着。研史と合流。幸栄はとても心配そうな表情だ。
「金河さんですが木曜日、金曜日の2日間風邪で会社休んでいたんですが今日、体調だいぶ良くなったみたいなんです。ですが俺が株の話をしたもので今日の朝、株価を見たみたいなんです。そうしたら体調悪くなって倒れたんです。すいません。俺のせいです」
担当医が幸栄と研史のところへ来る。
「検査の結果ですが特に悪い症状は見受けられませんが念の為、明日精密検査を行う予定です。今、ベッドで寝ていますので中へどうぞ」
ベッドで寝ている浩と面会。研史は担当医に事情を話す。
「あの金河さんですが、スマホで株価を見ていて倒れたらしいんです。
実は金河さん、株で大損しまして自宅も差し押さえになってしまったのです」
「株で精神的にかなりのダメージを受けたという事ですか。
再び株価を見た事で精神的ダメージがフラッシュバックした。うん。十分考えられますね。だとしたら今後、金河さんには株価を見せない。株の話をしないなどの対応が必要かと思います」
担当医が病室を出て中には、研史と幸栄。そしてベッドで寝ている浩の3人。
「金河さんが保有しているミートフードサービスの株がかなり上がっているんです。
これからも上がり続けるのか、そろそろ下がり始めるのか分かりません。
明日、証券会社の叔父さんに聞いてみようかと思います」
幸栄はもう株なんてどうでもいいと言う感じで首を横に振り、
「もう株が上がるとか下がるとか聞きたくない。株でうちのパパおかしくなっちゃったんだもん。
元々、ギャンブルはやらない。タバコは吸わない。好きなお酒はビールだけ。
でもパパは変わっちゃったんじゃない。株でお金を増やして家族にいい思いをさせてあげようって思っただけなのよ。家族思いであるのは昔も今もおんなじ」
ベッドでぐっすり眠っている浩を見て研史は帰る事にする。
幸栄は付き添う。
午後になり浩は目を覚ます。目を覚ました浩を見て幸栄は安心してほっとしたのか涙が出てくる。




