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リーマン投資  作者: 黒﨑 弘
本編

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15/20

第十章 初めての家族崩壊危機 1

 次の週、ブリディッシュテクニカルの本社ビル前に芸能リポーターとカメラクルーが数人、待機していた。そこへ白の国産高級車が到着。後ろの席から出てきたのはスーツを着たブリディッシュテクニカル、湯浅社長。

 人気の女性芸能リポーターがカメラクルーと駆け寄り、マイクを向けインタビューを求める。

「今回の御社製品の不具合、そしてそれに対しての隠ぺい問題、社長はどうお考えですか?」

 湯浅社長は、

「やめてください。話す事はありません」と手でマイク・カメラを振り払う。

再びマイクを向けると同じく手で振り払い、更にマイクを向けられ振り払おうとしたところ、社長の手が女性芸能リポーターの胸を触ってしまう。


 その日のワイドショー「ブリディッシュテクニカル社長、人気女性芸能リポーターにセクハラ行為」と報じた。


 電車で移動中のブリディッシュテクニカル営業社員2人は、電車内の宣伝モニターで、このセクハラ行為のニュースを観る。

「だめだ、うちの会社はもうだめだ!」

「そんな事言ったって今はロイドショックの真只中、いい転職先なんてないよ」


 ワイドショーを観ていた債権者からも愛想つかされる。


 金河家は期日までに返済しなければならない借金で窮地に立たされる。

住宅ローン返済中の為、銀行はこれ以上お金を貸してくれない。

浩の実家は家の修繕工事をしたばかりでお金なし。幸栄の実家は両親の介護でお金の余裕なし。


お隣さん、諏訪さんの奥さん麻子が、幸栄に「そんなにたくさんはないけどいくらか貸そうか?」という話を持ってきてくれたが、親しい人、友人からはお金を絶対借りないと言うのが金河家の方針。

「借りるのなら銀行」

友人、サラ金からは絶対借りない。


 そして家を手放さなければならなくなる。

幸栄は区役所へ行って、都営住宅の応募について聞いたり、家賃の安い物件を探したりした。


 そんな中、麻子から住み込みの物件を教えてもらう。

「私の知り合いがビル管理をしているんだけど住み込みで働くのだったら住む場所の家賃はタダだって言うから、そこに決めなくてもいいから行って話を聞くだけでもどう?」


 麻子に家賃がタダの働き口を紹介してもらう事にする。

浩は仕事中なので幸栄、祐衣、祐真、そして麻子の4人で、その物件を見に行く事となる。


 麻子の運転する車はビル隣の駐車場に駐車。ビルから60歳過ぎくらいの男性が出てくる。麻子の知り合いのビルオーナー、斉藤だ。

「お待ちしておりました。中へどうぞ」


 ビルの中へ入るとすぐに管理人室がある。そして隣にはエレベーター。5人でエレベーターに乗り最上階に到着。屋上だ。

屋上には建物が建っている。

玄関から中へ入り、斉藤はみんなに説明をする。

「ここは元々、資材を置いておく倉庫だったんですよ。それで作業をする人たちの休憩する場所がいるだろうという事になって中に畳部屋を作ったんです。それから今度はお昼の休み時間に、お茶飲んだりカップラーメンを食べたり出来るように小さなキッチンみたいの物を作りました。そこまで作ったらトイレもいるだろうとトイレも作りました」


 元々、資材置き場だった倉庫が、徐々にバージョンアップしていったらしい。


「前の管理人さんを採用する時、住み込みで働かしてほしいと言われたので、ほらそこの、シャワールームも作ったんです。なので、とりあえずは住む事が出来ます」


 玄関を入ってすぐ目の前は、6畳ほどのスペース。その中の右手にキッチンがあり換気扇も付いている。左手にはトイレとシャワー室。トイレの横に洗濯機が置ける。

いちばん奥に3畳の畳部屋だ。


 幸栄は前の管理人さんが辞めてしまった理由が気になったので聞いてみた。

「あの、前の管理人さんは?」


「ご高齢の方だったんですが、ビル内の掃除中に倒れられまして救急車で病院へ運ばれたのですが・・・心筋梗塞でした。あ、あのですから亡くなったのはビルの中ですが、この住居の中ではありませんよ(汗)」


 祐真は不安な表情で幸栄に言う。

「ねぇねぇ何々、おうちがビルの屋上の倉庫って何!」

元資材置き場の建物がこれからの住む家。祐衣・祐真はショックを隠せない。


「あの入居されるのは奥さんと娘さんお2人の計3人ですか?」


「あと旦那がいます」


「4人ですか。ここに4人はちょっと狭いかもしれませんねぇ」


「あの、ここの家賃は?」


「元々、資材置き場だったのをなんとか住めるようにした建物なので家賃は要らないです。ようはこのビルの管理人をやっていただくという条件で家賃は0円です。もちろんガス・電気・水道の公共料金は別途かかりますけどね」


 幸栄はスマホを取り出し。

「主人に確認取ってもいいですか?」


「ええ、どうぞ」


 幸栄は浩に電話をかける。浩が電話に出る。

「あなた。今、祐衣・祐真と一緒に家賃0円の住み込みの物件見に来ているの。家賃が0円だけどすごく狭いの。4人一緒に住むのは無理よ。でもね、ここに住もうと思う。

 あなたの会社の寮、空きあったわよね。あなたが寮に入れるか今、確認してくれる?」


「え!・・・」

 浩は流石に動揺してしまう。


「私は、私たちのあのマイホーム、まだ諦めていない。取り戻したい!だから今は住むところに極力お金はかけたくない。それとね、このままあなたと住んでいたらいろいろ文句を言ったりして、あなたとの関係が壊れてしまうような気がする。しばらく距離を置いたほうがいいと思う」


「・・・・ちょっと待ってくれ。今、所長に確認する」


浩は目に涙を溜めながら所長のところへ行く。

「所長、私1人、会社の寮に住みたいと言ったら住めますか?」

「え、金河さんあなた既婚者でしょ。え、奥さんとうまくいかなくなった?別れちゃうの?」


「いえ、今はお金がないから奥さんと子供は家賃0円の狭いところを見つけました。狭いから自分も一緒には住めません。私はしばらく寮に住みたいと思います。ダメですか?」


 浩の目から涙がこぼれる。そうとう落ち込んでいるだろう浩を見て二本木所長は、なんとか助けなければと思い、

「よし分かった。マルコー赤羽営業所長の権限でOKにする!」


「幸栄、俺は寮に住めるから大丈夫だ」


 浩の思いつめた顔を見た所長は入寮をOKにしたが本当に良かったのか事務の綾瀬に聞いてみる。

「なぁ、既婚者を寮に入れるの俺の独断で決めて、これって職権乱用とかになっちゃうかな?」


「所長、大丈夫です。良い事をしました」


 こうして家族別居生活が始まろうとしているのであった。


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