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リーマン投資  作者: 黒﨑 弘
本編

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12/20

第九章 裏切り 1

 浩はどうしても諦めきれない。


 次の日の朝、浩は早く目が覚める。そして幸栄に気が付かれないように起きる。

金庫を開けて、中の積立定期預金通帳を出しカバンに入れる。

いつもと変わらず、家族4人で朝食をとり、家を出る。


 バスに乗り赤羽駅に到着。自動販売機で缶コーヒーを買い、公園のベンチに座る。

スマホを取り出し、

「急用が出来たので今日は午後から出勤します」と会社へ連絡を入れる。


 缶コーヒーを飲み干し歩き出す。

銀行の窓口が開くのは9時、開くと同時に浩は銀行へ入る。

積立定期預金のほぼ全額150万円を証券口座に移す。

浩は思う(株で儲かったら住宅ローンも早く返せる。家族に楽をさせてあげられる。増やしてまた銀行預金に戻せば大丈夫だ。一時的に借りるだけだ)


 喫茶店に入る。

現在、証券口座に入っている現金は約200万円。

ブリディッシュテクニカル株価は現在962円。少しずつだが上がっている。

200万円あるから2,000株は買える。


 塩田参法を完全に信じている浩は出来るだけたくさん買いたい。そして浩はスマホ画面の信用取引をタップ。プラス500万円で総額700万円の投資が可能だ。


 700万円全額でブリディッシュテクニカル株を買おうと思った。しかし浩はその時、以前受けた株のセミナー・講演会を思い出した。

(同じ銘柄だけを買うのではなくいくつかの銘柄を買う。分散投資を行う)

少し考える。早く考えをまとめないとブリディッシュテクニカル株は今も上がっている。それに、お昼から会社出勤だ。そして研史の言葉を思い出した。

(金河さん、肉ですよ肉!)


 結局、ミートフード・吉松家を少々。あとはブリディッシュテクニカル全部購入。

浩は喫茶店を出て会社へ向かう。


 午後から出勤で作業場にて機械の修理を行っていたが急に罪悪感を感じる。

塩田参法を信じて、そして早く買わないとブリディッシュテクニカル株はどんどん上がる。だから一気に株を大量購入してしまった。しかも家族に内緒で。


 午後3時の休憩時間、株価をチェック。1,003円。ブリディッシュテクニカル株は上がっている。浩は安心する。


 その日の夕食時、

「株、たくさん買ったよ。上がると思う」

株を買ったという事は言ったが、さすがに積立定期預金に手を出した事は言えなかった。


 次の日。今日は木曜日、給料日である。

栄高精密で工作機械を1台入れたいという事で浩と研史は打ち合わせに向かう。打ち合わせは午前中に終わる。


 午後から工作機械メーカーアマノへ行く予定である。その前に昼食を取る為、食堂へ入る。

昔ながらといった感じの個人経営の小さなお店だ。お昼時なのでそここそ混んでいる。

浩は、煮魚定食。研史は、ポーク生姜焼き定食を注文。


 食堂にはテレビがありニュースが流れている。

アナウンサー「日本の大手証券会社・ロイド証券が本日午後2時に記者会見を開くと発表しました」

コメンテーター「ロイド証券なんですが最近、経営不振という噂があります。ひょっとしたら赤字額の発表やリストラ策の説明があるのかもしれません」

 

 浩はニュースの内容に即、反応する。

「ロイド証券っていったら大手だよな」


 それに対して研史は、

「株価に影響あるんじゃないですか?」


「どうだろう?」


 工作機械メーカーアマノでの打ち合わせは午後2時からだが2時少し前に到着。

待合室に通され少し待つ事となる。

待合室には他にもお客さんがいた。テレビがありワイドショー放送中。


 2時5分、担当者がくる。まずは工作機械展示場にある工作機械を見に行く事になる。

するとテレビにニュース速報のテロップが流れる。浩と研史は気が付かない。

浩たちは待合室を出る。


テロップ(本日、午後2時からの記者会見でロイド証券が経営破綻を発表)


ワイドショー司会者「今、ロイド証券が経営破綻というニュースが流れました。詳しい状況を会見場の田中アナウンサーお願いします」

田中アナ「たった今、ロイド証券の記者会見で経営破綻が発表されました」

ロイド証券、桜庭CEO「悪いのは我々役員です。社員は悪くありませんから(涙)

社員が路頭に迷わぬよう再就職のご支援どうぞよろしくお願いします」


 浩と研史はアマノでの打ち合わせが終了。車は浩が運転。研史が助手席でタブレットパソコンを使い報告書を作成する。


 会社へ戻り5時、仕事終了。


 自宅までのバスは満席で座れず。左手でつり革を持ち、右手だけでなんとかスマホでブリディッシュテクニカル株価をチェック。1,005円。昨日の終値から2円上昇。午前中、大きく上がったが午後から急に下がっている。とりあえずは昨日の終値より、わずかだが上がった。明日の株価に注目しようと浩は思った。


 自宅に到着。

幸栄がちょっと心配した表情だ。

「ちょっと、あなた!あなたの買った株ってニッケイなんとかっていう株?」


「いや、ブリディッシュテクニカルとあと肉関係の株を少々」


「それなら良かった。ニュースでニッケイなんとかっていう株が下がったって言っていたから」


「ニッケイなんとか?」


「パパ、早くテーブルに座って。もうお腹すいちゃったよ」

 ダイニングテーブルに座っている祐衣はもうお腹ペコペコらしい。


「明日は給料日あとの金曜日でしょ。おもしろい燻製を考えているから明日、楽しみにしていてね」

 祐真は明日、何か面白い燻製を作ってくれるらしい。


 ほろ酔い気分になった頃、テレビはニュース番組が始まる。

アナウンサー「本日2時からの会見で大手証券会社ロイド証券が経営破綻を発表。その後、株式市場は下がり始め、日経平均株価が昨日終値より600円以上暴落しました」


 いっしょにニュースを観ていた幸栄が一言。

「ほら、ニッケイなんとかっていう株が下がったって言っているでしょ」


 浩は酔いながらも、まさに目がテンと言った感じだ。「・・・・」

すぐにスマホで株価をチェックする。株価は全体的に下がっている。


 一気に酔いが醒めた浩は、とりあえず風呂に入る。


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