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バルディオス 再会

宿の一室。

灯りは落とされ、部屋の中は薄暗い。

「……遅いな」

アッシュがぽつりと呟く。

窓際に立ち、外を見つめている。

街は、完全に眠りについていた。

人の気配はない、音もない

静かすぎる夜。

「……」

ハイロも腕を組んだまま、口を開かない。

ゴンドーは壁にもたれ、じっと目を閉じている。

ロードランだけが、地図を見ていたが――

やがてそれを閉じた。

「予定より遅い」

それだけで、全員が理解する。

“何かあったのか…”。

アッシュは窓に手をつく。

無意識に、力が入る。

その時――

「……?」

遠く

正門のある方角、暗闇の中で何かが動いている。

「……おい」

アッシュが低く声をかける。

ハイロが顔を上げる。

「あれ……見えるか?」

視線を追う。暗くて、はっきりとは見えない。

ハイロがじっと見つめる

確かに“何か”がこちらに向かっている。

四足歩行の何か…

速い。

だが、どこか“乱れている”。

「……あれは」

ハイロの目が細くなる。

一瞬の沈黙。

「……ヒルデだ」

確信。

「行くぞ」

アッシュはもう動いていた。

扉を開け階段を降りる足音が、やけに響く。

外。

夜気が肌を刺す。

そして――

それは、すぐに見えた。

月明かりに照らされて。

「……っ」

言葉が、出ない。

虎。

巨大な体躯。

だが――

その全身が、傷だらけだった。

血に濡れ、毛並みは乱れ、息は荒い。

「ヒルデ……!」

ハイロが駆け寄る。

虎が、わずかに顔を上げる。

その目は――

まだ、生きている。

だが。

その背中に。

「……」

アッシュが、一歩近づく。

見えた。

乗せられている“それ”。

人の形。

ぐったりと、動かない。

「シン……?」

声が震える。

もう一歩近づく。

そして――

「……え」

理解が、追いつかない。

視線が、下に落ちる。

そこにあるはずのものが――

「……は?」

ない。

膝から下。

両足が。

「……っ」

息が止まる。

血が、滴っている。

布は裂け、骨も、肉も――

すべて、途中で“途切れている”。

「……嘘だろ……」

アッシュの声が、崩れる。

「おい……」

手が震える。

「おい……シン……!」

近づく。

肩に触れる。

冷たい。

「起きろよ……おい……!」

揺らす。

反応はない。

「ふざけんなよ……!」

声が、裏返る。

「なんだよこれ……!」

頭が追いつかない。

理解したくない。

現実が、拒絶される。

「なんでだよ……!」

叫びが、夜に響く。

その時――

虎の身体が、揺らいだ。

光が走る。

形が崩れる。

ヒルデの姿へと戻る。

「……っ」

そのまま、崩れ落ち地面に倒れる。

息も絶え絶え。

意識は、ほとんどない。

それでも――

唇が、わずかに動く。

「……はや……く……」

かすれた声。

「……治療院……に……」

それだけ言って――

意識が、途切れた。

完全な静寂。

誰も、動けない。

アッシュは、ただ立ち尽くす。

目の前の現実を、

まだ受け止めきれないまま。

夜は、何も変わらず静かだった。

――ただ、一つだけ。

取り返しのつかないものが、失われていた。

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