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バルディオス 立ち塞がる壁

張り詰めた空気の中。

セイルの視線が、ゆっくりとヒルデへ向く。

「……なるほど」

わずかに目を細める。

「創造魔法……いや」

一拍。

「変身魔法、といったところか」

観察するような声音。

「……」

ヒルデは答えない。

ただ、構えを崩さない。

その沈黙すら、セイルには興味深い。

「面白いね」

小さく笑う。

そして、ガリューンへ視線を流す。

「彼女は出来れば捕縛したい」

軽く言いながら、

「――そっちのゴミは」

シンへ一瞥。

「殺して構わない」

「……あぁ?」

シンの眉が跳ねる。

だがその瞬間――

魔法陣が開く。

「来い」

淡々と。

そこから現れたのは――

人の背丈ほどの魔物。

鋭い鎌を持つ、異形。

だがその身体には無機質な装甲が埋め込まれている。

――キラーマンティス。

「チッ……!」

ヒルデが地を蹴る。

同時に、キラーマンティスが跳躍。

鎌が振り下ろされる。

「――ッ!」

紙一重で回避。

続けざまに横薙ぎ。

鉤爪で受け流す。

火花が散る。

(速い……!)

だが――それだけじゃない。

「――そこ」

声。

ヒルデの背後。

「っ!?」

振り向くより先に、セイルが“現れる”。

転移。

距離ゼロ。

刃が閃く。

「……!」

ヒルデは咄嗟に身体を変形させる。

腕を盾のように硬質化。

――ギィンッ!

衝撃。

弾かれる。

(近接も来る……!)

即座に後退。

だが、その隙をキラーマンティスが逃さない。

再び突進。

完全に“連携”されている。

「くっ……!」

避ける、受ける、捌く。

一瞬も気が抜けない。

一方――

「ヒルデ!」

シンが踏み出す。

助けに入る。

だが。

「行かせん」

低い声。

ガリューンが前に立つ。

「どけッ!」

シンが斬りかかる。

速い。

だが――

「……」

ガリューンは静かに受ける。

剣がぶつかる。

重い。

「っ……!」

押し返される。

「邪魔だって言ってんだろ!」

連撃。

角度を変え、間合いを詰める。

だが全て――

いなされる。

受けられる。

崩れない。

「……軽いな」

淡々とした評価。

それだけで、差が分かる。

「っ……!」

シンが歯を食いしばる。

その間にも――

後方。

ヒルデは、ニ方向の圧に晒されていた。

キラーマンティス。

そして――

「逃げ場はないよ」

再び、セイルが“現れる”。

横からの斬撃。

「――ッ!」

ヒルデが強引に身体を逸らす。

布が裂ける。

皮膚がわずかに切れる。

浅い。

だが――

(削られていく……!)

ジリジリと。

確実に。

一方でシンは――

「退け……!」

再び踏み込む。

だが。

ガリューンの剣が、静かに構えられる。

その圧が、一段上がる。

「――ここから先は通さない」

断言。

壁。

完全に遮断される。

「くそ……!」

シンは、前に出られない。

その背後で――

ヒルデが、なおも戦っている。

だが。

流れは、確実に敵に傾いていた。

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