バルディオス 二対二
だが――
「っ」
セイルの目がわずかに動く。
次の瞬間。
ガリューンの肩に触れる。
魔法陣が瞬時に展開され――
二人の姿が、掻き消えた。
魔弾は、そのまま虚空を撃ち抜く。
「……!」
ヒルデが歯を食いしばる。
(速い……!)
だが、止まらない。
着地と同時に、両腕を変形させる。
皮膚が裂け、金属質の光沢を帯びる。
鋼鉄の鉤爪。
「――ッ!」
地面を蹴る。
一気に距離を詰める。
同時に――
「行くぞ……!」
シンも動いた。
影から飛び出す。
短剣を握り込み、回り込むように走る。
挟撃。
逃げ場を潰す動き。
(これで――)
「――遅い」
低い声。
シンの刃が届く寸前――
間に入った影。
ガリューン。
「っ!」
鋼と鋼がぶつかる。
シンの短剣が弾かれる。
「邪魔だ!」
シンが舌打ちする。
ガリューンは無言。
ただ、剣を構える。
隙がない。
その背後から――
ヒルデが迫る。
「そこ……!」
鉤爪が、一直線にセイルへと伸びる。
だが。
「……」
セイルは一歩も動かない。
ただ、指先がわずかに揺れる。
――転移。
瞬間。
その姿が消える。
ヒルデの一撃は、空を切った。
「……チッ!」
着地と同時に振り向く。
視線の先――
少し離れた位置に、再びセイルとガリューン。
距離を取られている。
「厄介ね……!」
ヒルデが低く吐き捨てる。
「本当に」
セイルが軽く息を吐く。
「つけられたみたいだね」
視線がヒルデとシンを捉える。
冷静そのもの。
「……」
ガリューンが一歩前に出る。
剣を静かに構える。
「消せば問題ない」
短く、無機質な声。
殺意だけがそこにある。
「物騒だな」
セイルが肩をすくめる。
だが、その目は笑っていない。
空気が張り詰める。
シンが短剣を握り直す。
(やるしかねぇか……!)
ヒルデも姿勢を低くする。
二対二。
だが――
相手は明らかに“普通じゃない”。
次の一手で、流れが決まる。
静寂の中。
再び、戦いが動き出そうとしていた。




