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バルディオス 制圧

板の奥――

隠されていた通路を抜けると、空気が一変した。

「……外か」

アッシュが小さく呟く。

そこは、街の裏手に広がる林だった。

建物の影に隠されるように存在していた空間。

木々が生い茂り、月明かりすら遮っている。

「足元、気をつけろ」

先頭のハイロが低く言う。

音を殺しながら進む。

――ハイロ、アッシュ、ゴンドー、ロードラン。

一列。

無駄のない隊列。

やがて――

「……あれだ」

ハイロが足を止める。

視線の先。

木々の奥に、黒く口を開けた洞穴があった。

自然のものに見えるが――

「……人の手が入ってるな」

アッシュが目を細める。

入口周辺が、わずかに整えられている。

「気配、複数」

ゴンドーが低く言う。

短いが、確実な情報。

「……まだ気づかれてない」

アッシュも続ける。

耳を澄ませば――

奥から微かに声がする。

人の気配。

油断している。

ロードランが一歩前に出た。

「ここからは静かにいこう」

そう言いながら、杖を構える。

先端に、わずかに魔力が集まる。

すぅ、と息を吸い込み――

ふっと、吹き込む。

次の瞬間。

杖の先から、白い煙が静かに溢れ出した。

「……」

煙は音もなく広がる。

地を這うように、ゆっくりと。

洞穴の中へと流れ込んでいく。

風に乗るようでいて、意志を持つような動き。

アッシュはその様子を見て、小さく息を吐く。

しばらく、待つ。

数秒――

十秒――

そして。

洞穴の奥が、ざわつき始めた。

「……なんだこれ……」

「煙……?」

「咳が――」

声が乱れる。

動きが崩れる。

その瞬間。

「行くぞ」

ロードランが低く言った。

合図。

同時に――

ハイロが地面を蹴る。

「――っ!」

一気に距離を詰める。

アッシュも続く。

ゴンドーは一歩遅れて、だが圧のある足取りで進む。

洞穴の中へ。

視界は煙で白く濁っている。

だが――

相手の方が圧倒的に混乱していた。

「な、なんだお前ら――!」

声。

遅い。

ハイロの一撃が先に入る。

鈍い音。

一人、崩れる。

「チッ……!」

別の男が武器を取ろうとする。

その腕を、アッシュが叩き落とす。

体勢を崩したところに、膝を叩き込む。

「ぐっ……!」

そのまま押さえ込む。

後方では――

ゴンドーが動いた。

「……」

言葉はない。

ただ、一振り。

重い斧の柄が、正確に相手の胴を打つ。

空気が抜ける音。

男が沈む。

煙の中、数人の影がもがく。

だが――

「もう遅い」

ロードランの声が、静かに響く。

煙が、さらに濃くなる。

視界も、呼吸も奪う。

抵抗は、続かない。

数秒後――

静寂。

荒い呼吸音だけが残る。

「……制圧、完了」

ハイロが周囲を見回す。

敵は全員、無力化されていた。

アッシュは拘束した男を押さえながら、息を吐く。

「……あっさりだな」

「奇襲が通ったからな」

ロードランが煙をゆっくりと引かせる。

視界が戻る。

洞穴の奥が、徐々に見えてくる。

「……さて」

ハイロが言う。

「ここからが本番だな」

その先には――

まだ、何かが隠されている。

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