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バルディオス 納品書

煙が完全に引いた頃。

「……奥に行くぞ」

ハイロが短く言う。

アッシュたちは頷き、洞穴のさらに奥へと進んだ。

足音が、乾いた地面に小さく響く。

やがて――

「……」

空間が開ける。

そこには、明らかに“生活の跡”があった。

簡素な寝床。

積まれた食料。

雑に置かれた衣類。

「……拠点だな」

アッシュが辺りを見回す。

「短期じゃない」

ロードランも静かに言う。

「ある程度の期間、ここを使っている」

「隠れ家にしちゃあ、整ってるな」

ハイロが鼻を鳴らす。

「運搬の中継地点ってとこか」

アッシュは近くにあった木箱を開ける。

中身を確認し――

「……ん?」

一枚の紙が目に入る。

「なんだこれ」

取り出して広げる。

簡単な記録。

数量、日付、品目。

そして――

「……送り先」

アッシュの目が止まる。

「“ボルナート”……?」

聞き覚えのない名前。

「なぁ」

紙を掲げる。

「これ、誰だ?」

ハイロに向けて聞く。

だが――

「……いや」

ハイロは首を振った。

「知らねぇな」

「だよな……」

アッシュが眉をひそめる。

その時。

「……ボルナート」

ロードランが小さく呟いた。

何かを思い出すように。

「確か……」

少し間を置いて、

「アルケイアの軍将の名だったはずだ」

空気が、変わる。

「……マジかよ」

アッシュの声が低くなる。

「確証はないが……可能性は高い」

ロードランは冷静に続ける。

「この流れ、この規模――偶然で片付けるには無理がある」

ハイロが舌打ちする。

「つまり……繋がってるってことか」

「証拠としては十分だ」

ロードランが頷く。

「だが――」

言葉を区切る。

「問題は、こいつらが何者か、だ」

倒れている男たちへ視線を向ける。

「どこの所属か。それが分からなければ、全体像は見えない」

「……だな」

アッシュも同意する。

その時。

「……連れて帰るか」

ゴンドーが低く言った。

既に動いている。

倒れていた男の一人を、無造作に引き起こし――

縄で縛る。

手際がいい。

迷いがない。

「おいおい」

アッシュが苦笑する。

「それ、完全に“誘拐”じゃねぇか?」

ゴンドーは何も言わず、男を布袋に押し込む。

ずしり、と担ぎ上げる。

その様子を見て、

ハイロがぼそっと言った。

「……何言ってる」

少しだけ呆れた声。

「この国じゃ、こいつらは何もしてねぇ」

一拍。

そして、淡々と続ける。

「だからこれは――」

わずかに目を細める。

「立派な誘拐だ」

「開き直るなよ……」

アッシュが思わず突っ込む。

だが――

否定はできない。

「ま、情報は必要だ」

ロードランが静かにまとめる。

「多少荒っぽくてもな」

その言葉に、誰も反論しなかった。

洞穴の奥。

積まれた物資と、残された痕跡。

そして――

“ボルナート”の名。

点だったものが、線に変わり始めていた。

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