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届かない背中
炎の熱が、背中を焼く。
走っているはずなのに、前に進んでいる気がしない。
レオンはカーシュに腕を引かれながら、ただ足を動かしていた。
「……離せよ!」
思わず叫ぶ。
「まだ、みんな——」
「見ろ!!」
カーシュが怒鳴る。
無理やり視線を引き戻される。
そこにあったのは——
崩れ落ちる家。
炎に飲み込まれる人影。
そして、それを囲む“影”の群れ。
「……っ」
言葉が消える。
助けられる数じゃない。
それどころか——
近づけば、終わる。
「……でも……!」
「わかってるだろ」
低く、押し殺した声。
「今のお前じゃ、何もできねえ」
事実だった。
何一つ、否定できない。
レオンは歯を食いしばる。
悔しさで、視界が滲む。
それでも——
足は止まらなかった。




