表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/102

バルディオス 張り込み

夜の帳が、街を覆っていた。

人気の薄れた通りを抜け、アッシュとシンは指定された場所へと辿り着く。

古びた空き家。

外から見れば、ただの打ち捨てられた建物だ。

「……ここか」

「だな」

短く確認し、扉を押す。

軋む音と共に中へ入ると――

「来たか」

低い声。

すでに、ハイロ達が集まっていた。

室内は暗く、最低限の灯りだけが置かれている。

窓際には、ヒルデの姿。

その視線は、外へ向けられていた。

「遅くなった」

アッシュが小声で言う。

「問題ない」

ヒルデは振り返らずに答えた。

「状況は?」

シンがそのまま問いかける。

ヒルデが顎で窓の外を示す。

「ここが、最後に“それ”が確認された場所」

二人もそちらへ寄る。

窓の先――

薄暗い裏路地が伸びていた。

その先は開けており、小さな荷物置き場のような空間になっている。

だが――

「行き止まり、か?」

アッシュが呟く。

「表向きはね」

ヒルデが静かに言う。

「見張ってはいるけど……」

わずかに目を細める。

「まだ動きはない」

「怪しい出入りもなし?」

シンが聞く。

「今のところは」

ヒルデが頷く。

「荷馬車も確認できてない」

「……なるほどな」

アッシュが腕を組む。

「完全に“待ち”ってわけか」

「そういうこと」

短いやり取りの後、再び静寂が落ちる。

時間が過ぎていく。

夜はさらに深まり――

通りを行き交う人影も、次第に減っていった。

遠くで犬が鳴く声。

風が細く抜ける音。

それだけが、空間を満たす。

「……なぁ」

シンが小さく口を開く。

「今日、空振りってやつか?」

アッシュにだけ聞こえるような声。

「かもな」

アッシュも同じトーンで返す。

「そう簡単には――」

その時だった。

ヒルデの手が、すっと上がる。

視線は動かさないまま。

だが、その合図は明確だった。

――隠れろ。

瞬間。

ハイロ達が音もなく身を沈める。

反応は早い。

それにつられるように、アッシュとシンも姿勢を低くした。

空気が、一変する。

張り詰める。

ヒルデの視線の先――

窓の向こう。

裏路地の、側面の壁。

ただの石壁にしか見えなかったそれが――

「……?」

シンの目が細くなる。

“揺れた”。

ほんのわずかに、空気が歪むように。

「……」

誰も声を出さない。

じっと見つめる。

やがて――

壁が、ゆっくりと“消えていく”。

削れるように、ではない。

溶けるように。

その奥から現れたのは――

簡素な板。

隠されていた“入口”。

「……は」

シンの口元がわずかに動く。

「……幻影魔法か」

小さく、確信めいた声。

板が軋みながら、横にずれる。

暗がりの中から――

人影が現れる。

続いて、荷馬車。

布で覆われた荷。

だが、その形は明らかに――

「……来たな」

アッシュが低く呟く。

ヒルデは目を細めたまま、

「……当たりね」

と、静かにこぼした。

夜の奥で――

“隠されていた流れ”が、ついに姿を現した

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ