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バルディオス 香水

夜。

街の喧騒は昼より落ち着き、代わりに灯りが増えていた。

アッシュとシンの部屋。

二人は黙々と身支度を整えていた。

装備は最低限。

音の出るものは外す。

動きやすさ優先。

「……こんなもんか」

アッシュが腰の装備を確認する。

「だな」

シンも軽く頷く。

「完全に怪しいお仕事って感じだな」

「言い方やめろ」

アッシュがぼそっと返す。

その時――

ガチャ、と扉が開いた。

「おう」

チャップだった。

二人の手が一瞬だけ止まる。

視線が向く。

「なんだ、その格好」

チャップが軽く眉を上げる。

だが、その前に――

(……なんだその匂い)

アッシュは内心で思う。

やけに整えられた髪。

妙に上等な服。

そして、強めの香水の匂い。

(……仕事じゃねぇな)

一瞬で察する。

「ちょっとな」

アッシュは適当に答える。

「街、見回ってくる」

「夜にか?」

チャップがニヤつく。

「熱心だなぁ、お前ら」

その言い方は、明らかに馬鹿にしていた。

「そっちは?」

シンが軽く聞く。

チャップは肩をすくめる。

「あー、俺はちょっと“用事”だ」

わざとらしく言う。

「大事なな」

(はいはい)

アッシュは心の中で呆れる。

(どうせ女だろ)

口には出さない。

出す価値もない。

「ま、好きにしろ」

チャップは興味なさげに言う。

「ただ――」

振り返りざまに、

「騒ぎだけは起こすなよ?」

軽く指を振る。

「面倒ごとは御免だからな」

それだけ言って、部屋を出ていった。

扉が閉まる。

沈黙。

数秒後――

「……なぁ」

アッシュが口を開く。

「“大事な用事”ってさ」

「うん」

シンが即答する。

「絶対そっち系だな」

「だよな」

アッシュがため息をつく。

「香水きつすぎだろ……」

「気合い入りすぎて逆に分かりやすいな」

シンがくすっと笑う。

「俺らは命張ってんのになぁ」

「ほんとにな」

アッシュが肩を回す。

少しだけ、空気が軽くなる。

だが――

シンがふっと表情を引き締める。

「ま、いいか」

「だな」

アッシュも頷く。

「こっちはこっちでやるだけだ」

軽く拳を握る。

「行くぞ」

「おう」

短いやり取り。

二人は部屋を出る。

廊下は静かで、外の灯りが細く差し込んでいた。

扉を閉める音が、小さく響く。

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