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バルディオス 円卓

宿の一室。

扉が閉まると、外の喧騒がすっと遠のいた。

円卓を囲むように、それぞれが腰を下ろす。

わずかな沈黙。

「……ま、まずは顔合わせだな」

ハイロが肩を回しながら口を開く。

「こいつらは後輩のアッシュとシンだ」

顎でアッシュとシンを示す。

「ヒルデだ」

女魔導士が落ち着いた声で言う。

「この班のまとめ役をしてる」

視線が静かに二人を捉える。

「ロードランだ」

隣の男が続く。

「状況整理と後方支援を担当してる」

「ゴンドーだ」

低い声が一つ。

それだけで十分だった。

「……アッシュ」

「シン」

二人も短く名乗る。

「一応、隠れるのは得意だぜ」

シンが軽く笑って言う。

「“一応”じゃねぇだろ」

アッシュが横からぼそっと突っ込む。

「盛ると後で困るだろ?」

肩をすくめるシン。

そのやり取りに、少しだけ空気が緩む。

ヒルデが小さく頷いた。

「いい。じゃあ本題に入る」

その一言で、場が引き締まる。

「この街、歩いてみてどうだった?」

問いかけ。

アッシュが腕を組む。

「……普通すぎるな」

「同感」

シンも頷く。

「逆に不気味なくらい」

ヒルデの口元がわずかに動く。

「いい感覚してるわね」

椅子に背を預ける。

「表はね、ずっとこんな感じなの」

穏やかで、活気があって、何も問題がないように見える。

「でも――裏では様々な取引が動いてる」

その言葉に、空気が少しだけ重くなる。

「どうやら最近、魔物の捕獲が増えてる様なんだ」

ロードランが静かに続ける。

「討伐じゃない。“確保して何処へ運ぶ”動きだ」

「……数は?」

シンが聞く。

「継続的に確認されてる」

「一件二件じゃねぇな」

アッシュが低く言う。

「ええ」

ヒルデが頷く。

「しかも運び先が分からない」

「……は?」

アッシュが眉をひそめる。

「追えてないのか?」

「途中で足取りが消えるの」

ヒルデは淡々と言う。

「輸送ルートが意図的に隠されてる」

シンが軽く息を吐く。

「いかにも何かやってます…って感じだな」

「そういうこと」

ヒルデが肯定する。

「で、その“何か”の中身だけど――」

わずかに間を置く。

「アルケイアの件、知ってる?」

「……魔装兵器獣」

アッシュがすぐに答える。

「関係してる可能性が高い」

ロードランが静かに言う。

「素材か、実験か……いずれにしても、放置できる内容じゃない」

沈黙が落ちる。

重さが、じわりと広がる。

「なるほどな……」

シンが小さく呟く。

そして、顔を上げる。

「で?」

少しだけ笑う。

「やることはシンプルだろ?」

ヒルデが視線を向ける。

「ええ」

頷く。

「運ばれている魔物の“行き先”を突き止める」

「……追うってことか」

アッシュが確認する。

「そう」

ヒルデの目は真っ直ぐだった。

「輸送を見つけて、後をつける」

「リスクは?」

シンが聞く。

「高いわ」

即答だった。

「だから人手が欲しい」

一拍。

そして――

「あなた達にも手伝ってもらう」

静かな視線が向けられる。

試すようで、拒絶はない。

アッシュは小さく息を吐いて、

「……断る理由ねぇな」

と言った。

シンは軽く笑う。

「むしろそういう奴探してた」

「だと思ったわ」

ヒルデがわずかに口元を緩める。

「じゃあ決まりね」

ロードランが机の上に地図を広げる。

「動くのは明日からだ」

静かに、だが確実に。

全員の視線が、一点に集まる。

――“見えない行き先”へ。

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