バルディオス 先輩
「……で?」
石畳の通りを歩きながら、ハイロが横目で聞く。
「誰と来た」
短い問い。
シンは肩をすくめて、
「チャップっていうボンクラ」
あっさり言った。
「ははっ、言うなぁ」
アッシュが苦笑する。
一方でハイロは、ほんの一瞬だけ言葉を止めて――
「……あいつか」
低く呟いた。
その響きは、明らかに何かを知っている者のものだった。
「知ってんのか?」
アッシュが聞く。
「まぁな」
それ以上は語らない。
だが、十分だった。
(……やっぱロクでもねぇな)
空気がそれを物語っている。
「行くぞ」
ハイロが歩みを早める。
「お前らだけで動かせるよりはマシだ」
やがて辿り着いたのは、少し奥まった位置にある宿だった。
人目につきにくい場所。
だが中には確かな気配がある。
「ここだ」
扉を開ける。
中に入ると、視線が一斉に向けられた。
「戻ったか」
一人の剣士が声をかける。
その隣には、もう一人の剣士と魔導士が二人。
四人構成の班。
そのうちの一人――剣士が、アッシュとシンを見てわずかに目を見開いた。
「……」
一瞬の反応。
だが、何も言わない。
ただ静かに視線を逸らす。
(……ありがてぇ)
アッシュは内心で思う。
あえて触れない――その判断。
「で?」
魔導士の一人が口を開く。
やや鋭い視線が向けられる。
「そいつらは?」
「顔馴染みだ」
ハイロが簡潔に答える。
「シンとアッシュ」
軽く二人を示す。
「シンは隠密向きだ。潜入には使える」
「お、ありがたいね」
シンが軽く笑う。
「アッシュは前に出れば戦える」
「ついでみたいに言うな」
アッシュがぼそっと返す。
一瞬、空気が緩む。
だが――
魔導士の視線はまだ外れない。
「……随分若いな」
片方が呟く。
値踏みするような目。
「問題あるか?」
ハイロが淡々と返す。
「いや」
少しの間。
二人を見比べて――
「……まぁいいだろう」
小さく息を吐いた。
「使えるならな」
「問題ない」
ハイロが短く言う。
それで話は決まった。
「よろしくな」
シンが軽く手を上げる。
「……世話になる」
アッシュも続く。
剣士の一人が小さく鼻を鳴らし、
もう一人は無言のまま頷いた。
こうして――
別々に動いていた流れが、静かに合流した。




