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星空の下

夕暮れが、ゆっくりと地平線に沈んでいく。

橙に染まった空の下――

レオン達の荷馬車は、安定した速度で進んでいた。

「この先、魔力反応無し水場もありそうですね」

ミレアが短く告げる。

「いいな。野営に使う」

ファルガが即座に判断する。

手綱を引き、進路をわずかに変える。

やがて視界が開けた。

小川と岩場。

風を遮り、見通しもいい。

「……静か」

リシェルが一言だけ呟く。

「中々良いとこだな」

ニクスが周囲を見回す。

ミレアが小さく頷く。

「決まりだな」

ファルガが馬車を止める。

「ここで野営する」

指示は短い。

だが、それで十分だった。

自然と全員が動き出す。

薪を集める。

水を汲む。

周囲を確認する。

無駄がない。

「火、つけるぞ」

ニクスが軽く手をかざす。

ぱち、と小さな炎が薪に移る。

やわらかな光が広がった。

「……マジで何も出ねぇな」

ニクスが少し拍子抜けしたように言う。

「出ない方がいい…」

リシェルが短く答える。

「索敵、優先」

ミレアは何も言わない。

ただ静かに周囲へ意識を巡らせている。

「いい連携だ」

ファルガが火の前に腰を下ろす。

「こういう積み重ねが、生き残りに直結する」

レオンはその言葉を、静かに聞いていた。

穏やかな時間が流れる。

火の音と、水のせせらぎだけが響いていた。


――同じ頃。

「飛ばせ!!」

怒号が夜の森に響く。

荷馬車が、激しく揺れながら疾走していた。

「これ以上は無理だ!!」

御者台で手綱を握るソルベが叫ぶ。

馬の息は荒く、限界が近い。

「抜かれるぞ!!」

チャップが振り返りながら怒鳴る。

その視線の先――

闇の中を、複数の影が追ってきていた。

唸り声。

地面を蹴る音。

明らかに数が多い。

「くそっ……!」

荷台で身体を支えながら、アッシュが歯を食いしばる。

「なんだよあの数……!」

「縄張りだ」

シンが短く言う。

視線は後方に固定されたまま。

「踏み込みすぎた」

「誰のせいだよ……!」

アッシュが吐き捨てる。

答えは分かっている。


少し前――

「近道だ」

そう言って進路を変えたのは、チャップだ。

結果がこれだ。

「黙ってろ!!」

チャップが苛立ちを隠さず怒鳴る。

「振り切りゃいいだけだろうが!」

「簡単に言ってんじゃねぇ!!」

ソルベが叫び返す。

荷馬車が大きく跳ねる。

「うおっ……!」

アッシュが体勢を崩しかける。

「大丈夫か!!」

シンが腕を掴んで引き戻す。

その間にも――

距離は、じわじわと詰められていた。

「……まだ来る」

シンが低く呟く。

「チッ……!」

アッシュが舌打ちする。

「これ、振り切れんのかよ……!」

誰も否定しない。

否定できない。

止まれば、終わる。

だから――

「そのまま飛ばせ!!」

チャップが怒鳴る。

「死ぬ気で逃げろ!!」

荷馬車は、闇の中を走り続ける。

振り切れない恐怖を背に。


一方で、

「見張り、順番決める」

リシェルが短く言う。

「俺が最初やる」

レオンが手を上げる。

「……お願いするよ」

ユージンが静かに頷いた。

火は安定して燃えている。

空には星。

風は穏やか。

「今夜はゆっくり出来そうだな」

ファルガがぽつりと言う。

同じ夜。

同じ空の下。

だが――

その距離は、あまりにも遠かった。

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