三級魔導士のチャップ
指定された場所は、街外れの簡素な集合地点だった。
荷の積み替えに使われるのか、木箱がいくつか積まれているだけ。
人の気配は――一つ。
「……あれだな」
アッシュが顎で示す。
そこにいたのは、一人の男。
ローブを羽織り、杖を手にしている。
見た目からして、魔導士。
男――チャップは、二人に気づくと露骨に眉をひそめた。
「……なんだよ」
値踏みするような視線。
「ガキじゃねーか」
不満を隠そうともしない声だった。
アッシュの眉がわずかに動く。
「文句なら掲示板に書いとけよ」
一歩前に出る。
「参加資格に条件つけてねぇのは、あんたの方だろ」
「……あ?」
チャップの目が細くなる。
「それで来た奴に文句言われる筋合いはねぇな」
静かだが、はっきりとした口調。
一瞬、空気が張り詰めた。
「……チッ」
チャップは舌打ちを一つ。
「まあいい」
興味を失ったように肩をすくめる。
その横で、シンが一歩前に出た。
「潜入調査なら、問題ない」
短く言う。
「隠密行動には慣れてる」
無駄のない言葉だった。
チャップが、じっとシンを見る。
その目が、わずかに細まる。
「……ほぉ?」
口元が歪む。
にやり、と笑った。
「だがな」
声のトーンが少し落ちる。
「予算は限られてるんだ」
指で軽く杖を叩く。
「半人前を連れてく余裕はねぇ」
その言い方に、
アッシュのこめかみがぴくりと動いた。
(……言ってくれるじゃねぇか)
だが、何も言わない。
チャップは続ける。
「どうしても参加したいってんなら――」
わざとらしく間を置く。
「報酬は半額ずつだ」
薄く笑う。
「それでもいいなら、連れてってやるよ」
明らかに、試している目だった。
沈黙。
アッシュは、ちらりとシンを見る。
シンも、同じように視線を返す。
言葉はいらない。
――確認は、それだけで十分だった。
(……どうする)
(……行く)
ほんの一瞬で、意思は一致する。
アッシュは小さく息を吐き、
「……いいぜ」
と、吐き捨てるように言った。
「その条件で構わねぇ」
シンも、静かに頷く。
「問題ない」
チャップの口元が、さらに歪む。
「ははっ、いいねぇ」
どこか楽しそうに笑う。
「覚悟だけは一人前ってわけか」
視線が、二人を順に舐めるように動く。
「……死ぬなよ、ガキども」
軽く言い放つ。
アッシュは肩をすくめた。
「そっちこそな」
小さく返す。
シンは何も言わない。
ただ、前を見ていた。
こうして――
本来なら踏み入るべきでない任務に、
二人は足を踏み入れた。




