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ゼルガリア 抜けた先に

押し切った。


血と鉄の壁を、強引にこじ開けた。


息を切らしながら、レオンは最後の一線を越える。


その先――


ぽっかりと空いた空間。


まるでそこだけ、戦場から切り離されたかのような静寂。


「……っ」


足を止める。


視線の先に、一人の影。


フードを深く被った人物が、静かに立っていた。


周囲には、敵兵の姿がない。


まるで“守られている”中心。


(……あいつか)


確信する。


レオンは一歩、踏み出した。


「おい!」


声を張る。


「転移魔法を使ってるのは、お前だろ!」


その声に。


フードの人物が、ゆっくりとこちらを向いた。


わずかな沈黙。


そして――


「……なんで」


低く、淡々とした声。


どこか呆れたような響き。


「ここに君がいるの?」


その言葉に、レオンの眉がわずかに動く。


聞き覚えがあった。


フードが、ゆっくりと外される。


現れた顔。


冷めた瞳。


感情の薄い表情。


「……セイル」


思わず名前が漏れる。


かつて対峙した相手。


テレポートを操る、あの男。


セイルは小さく息を吐いた。


「はぁ……」


面倒そうに、頭をかく。


「本当に、運が悪いな。君も、僕も」


その足元。


地面に描かれた巨大な魔法陣が、すでに光を帯びていた。


複雑に重なり合う紋様。


「……なんだ、それ」


レオンが低く問う。


セイルは一瞬だけ視線を落とし、そして言った。


「もう始まってるよ」


その瞬間。


地面が、震えた。


「――っ!」


重い振動。


足元から伝わる、圧倒的な質量の気配。


魔法陣の中心が、黒く歪む。


空間が裂けるように開き――


“それ”が、現れた。


巨大な影。


二本の、異様に発達した角。


地を踏みしめるたびに軋む大地。


背中には――砲身。


明らかに生物ではない、無機質な構造物が組み込まれている。


肉と金属の融合。


全身の至る所に、人工的な装置。


赤く光る眼が、ゆっくりと開く。


「……っ、なんだよ……これ……」


思わず、言葉が漏れる。


それは、魔物ではなかった。


かといって、兵器とも違う。


その両方を、無理やり一つにした存在。


「魔装兵器獣」


セイルが、淡々と口にする。


まるで、ただの“名称”を告げるように。


「……アルケイア製だよ」


軽く言い放つ。


その一言で、全てが繋がる。


人体実験国家。


禁忌に踏み込む国。


「……ふざけてる」


レオンの声が低く沈む。


セイルは肩をすくめた。


「同感だね」


興味なさげに答える。


「任務とはいえ、この状況はあまり好ましくない」


視線が、魔装兵器獣へ向く。


「制御も甘い。暴走する可能性もある」


そして――


再びレオンを見る。


「……精々、逃げ残ってくれ」


その言葉に、感情はなかった。


忠告でもない。


ただの事実確認のようなもの。


次の瞬間。


セイルの姿が、掻き消えた。


転移。


一瞬で、その場から消える。


残されたのは――


巨大な“それ”と、レオンたちだけ。


魔装兵器獣が、ゆっくりと首を動かす。


ギギ、と不快な音が鳴る。


赤い眼が、レオンを捉えた。


その瞬間。


背筋を、冷たいものが走る。


(……なんだコイツは)


本能が警告する。


今までの敵とは、明らかに違う。


格が違う。


それでも――


レオンは一歩、前に出た。


剣を、構える。


逃げるという選択肢は、最初からなかった。


背後には、仲間がいる。


戦場がある。


ここで止めなければ、被害は広がる。


「……来いよ」


小さく、呟く。


呼吸を整える。


マナの流れを掴む。


相手の“歪み”を読む。


魔装兵器獣が、低く唸った。


背中の砲身が、ゆっくりと持ち上がる。


次の瞬間。


夜の戦場に――


新たな“災厄”が、牙を剥いた。


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