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見えない境界3

その夜。

 レオンはまた、外に出ていた。

 昨日と同じ。

 理由はわからない。

 ただ、じっとしていられなかった。

 空気が重い。

 風が止まっている。

 音が、ない。

 村は静かなはずなのに——

 “静かすぎる”。

「……」

 森の方を見る。

 暗闇が広がっている。

 何も見えない。

 それなのに——

(……来る)

 確信があった。

 昨日よりもはっきりと。

 近い。

 確実に、近づいている。

 足音は聞こえない。

 気配も曖昧だ。

 それでも、“境界”のようなものがある。

 森と村を分ける、見えない線。

 それを——

 何かが、越えようとしている。

「……気のせいじゃない」

 小さく呟く。

 その瞬間。

 遠くで、かすかな音がした。

 ——バキッ

 木が折れる音。

 レオンの体が強張る。

 次の音は、もう少し近かった。

 ——ミシッ

 呼吸が浅くなる。

 逃げるべきか。

 知らせるべきか。

 足が動かない。

 そして——

 暗闇の奥で、“何か”が動いた。

 はっきりとは見えない。

 だが、人ではない。

 獣とも違う。

 輪郭が歪んでいる。

 複数。

 確実に、複数。

 それが、ゆっくりとこちらへ向かってくる。

「……っ」

 声が出ない。

 喉が締め付けられる。

 頭の奥で、警鐘が鳴り続けている。

 ——逃げろ

 だが、体は動かない。

 目を逸らせない。

 その“何か”は、境界の手前で止まった。

 まるで——

 こちらを、見ているかのように。

 時間が止まる。

 風も、音も、すべてが消える。

 そして次の瞬間。

 それらは、一斉に“奥へ”引いた。

 音もなく、気配もなく、消える。

「……は……?」

 力が抜ける。

 膝が震える。

 今のは何だったのか。

 なぜ、来なかったのか。

 理解できない。

 ただ一つ、確かなことがある。

 ——これは、終わりじゃない。

 むしろ——

 “始まり”だ。

 レオンはその場に立ち尽くしたまま、暗闇を見つめ続けた。

 何も見えない森の奥に、確かな“悪意”を感じながら。

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こわいこわい、なにがいるんや
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