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失踪事件 地下最深部

 石造りの階段を降り切る。

 重い扉を押し開けた先。

 そこにあったのは――

 淡く光る檻。

 そして、その中に座る少年。

「……レオン!」

 ユージンの声が響く。

 顔を上げるレオン。

 その視線が、まっすぐ向く。

 無事だ。

 だが――動けない。

 檻が、マナを遮断している。

 そして。

 その前に立つ男。

「……来たか」

 セイル。

 振り返ることなく、そう言った。


「どけぇ!!」

 アッシュが踏み込む。

 一気に距離を詰め、剣を振るう。

 だが。

 ――消えた。

 セイルの姿が、一瞬で消失する。

「なっ――」

 空振り。

 次の瞬間、背後。

 だが、攻撃は来ない。

 距離を取っている。

(連続では使えない……!)

 ユージンが瞬時に理解する。

(転移には間がある!)


 ユージンが動く。

 狙いはレオン。

 だが。

 その前に――

「通さない」

 セイルが立ちはだかる。

 ナイフが閃く。

「っ!」

 ユージンは咄嗟に後退する。

 紙一重で回避。

 だが、その刃先を見て――

(……何か塗ってある)

 光の反射が違う。

 嫌な予感。

「……毒か」

 小さく呟く。

 セイルが薄く笑う。

「察しがいいね」


「関係ねぇ!」

 アッシュが再び突っ込む。

 横薙ぎ。

 鋭い一撃。

 だが。

 ――また消える。

「ちっ……!」

 視界から消失。

 次の瞬間。

 ――ドスッ

「……っ!!」

 アッシュの体が止まる。

 左脇腹。

 ナイフが突き刺さっていた。

「が……っ……!」

 激痛。

 息が詰まる。

 だが。


「逃がすかよ……!」

 アッシュが体を捻る。

 無理やり腕を回す。

 セイルに――抱きつく。

「なに……!?」

 完全な不意。

 拘束。

 動きを封じる。

「今だ……!」

 血を吐きながら叫ぶ。

「ユージン!!」


 ユージンは迷わなかった。

 檻へと駆ける。

「――っ!」

 錠に手をかけ、力任せに叩き壊す。

 金属が歪む。

 軋む音。

 そして――外れる。

「レオン!」

 檻が開く。

 その瞬間。

 レオンが一歩、外へ出る。

 閉ざされていた流れが、一気に戻る。

 マナが、身体に満ちる。


 ユージンが振り返る。

 ほんの一瞬。

 だが――

 その一瞬で、状況は変わっていた。

「……っ!」

 アッシュの体が崩れ落ちてる

 膝から力が抜ける。

 傷は塞がっていない。

 毒も、まだ回っている。

「……ぐ……っ……」

 呼吸が浅い。

 そして――

 その腕から。

 離れていた。


「……無謀だね」

 低い声。

 セイル。

 既に拘束から脱していた。

 アッシュの力が抜けた瞬間。

 ほんのわずかな隙で、すり抜けた。

 距離を取り、体勢を整える。

 ナイフを軽く振る。

 血が飛ぶ。

「惜しかったね」

 薄く笑う。


 空気が張り詰める。

 ユージンが歯を食いしばる。

(間に合わなかった……!)

 判断は正しかったはずだ。

 だが。

 “同時”には救えない。

 その現実。

 レオンは何も言わない。

 ただ。

 セイルを見ていた。


 次の瞬間。

 レオンが動く。

 一歩。

 前へ。

 アッシュとセイルの“間”に入る。

 自然に。

 迷いなく。

「……てめぇ」

 低く言う。

 セイルが目を細める。

「ほう」

 興味深そうに。

「やっと動けるようになったか」


 その背後で。

 ユージンが駆け寄る。

「動くな、アッシュ!」

 即座に手を当てる。

「――回復」

 魔力を流し込む。

 傷が塞がる。

「……解毒」

 続けて処置。

 アッシュの呼吸が、徐々に戻る。

「……は……っ……」

「喋るな」

 短く制する。


(……結局)

 ユージンは、小さく苦笑する。

 頭をよぎる言葉。

 自分が語った“優先順位”。

 合理。

 理屈。

 だが。

(目の前で倒れてる仲間を放ってはおけなかった)

 静かに息を吐く。

(……無理だな)

 それでいい。

 そう思えた。

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