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失踪事件 後を追うもの

■ 痕跡

 森の中。

 規律正しく進んでいた隊列が、不意に止まる。

「……待て」

 ディルクが手を上げた。

 周囲を見渡す。

 違和感。

「この辺りだ」

 低く呟く。

 兵たちが警戒を強める。

 そして――

「……いたぞ!」

 前方から声。

 駆け寄る。

 そこには――

 縛られ、転がされている数名の生徒。

 魔法生の制服。

 見覚えのある顔。

「……失踪者か」

 兵の一人が言う。

 だが様子がおかしい。

 怪我はあるが、致命的ではない。

 それよりも――

「……縛り方が雑だな」

 別の兵が呟く。

 確保はされている。

 だが、軍の手口ではない。

 もっと――

「荒いな」

 ディルクが小さく言う。

 視線を落とす。

 地面に、何かが刺さっている。

 紙だ。

 簡素な張り紙。

 それを引き抜く。

 そこに書かれていたのは――

『裏切り者』


 沈黙。

 兵たちが顔を見合わせる。

「……これは」

「内部犯の制圧か……?」

 ざわつく空気。

 だが。

 ディルクは、小さく息を吐いた。

「……あいつらか」

 ぽつりと呟く。

 脳裏に浮かぶ顔。

 ユージン。

 リシェル。

 それにニクスやミレア達

 自然と答えが出る。

 張り紙を見つめる。

 “裏切り者”

 乱暴で、分かりやすい言葉。

 そして。

(……やりそうだな)

 心の中で、苦笑する。

 規律も命令も無視して。

 それでも、仲間を優先する。

 あの連中なら。

「どうしますか」

 兵の一人が問う。

 ディルクは張り紙を畳む。

「放置でいい」

「は?」

「こいつらは後で回収される」

 視線を前へ向ける。

「それよりも――」

 一歩踏み出す。

「先に進む」

 短く言い切る。

「既に先行している連中がいる」

 兵たちが顔を引き締める。

「急ぐぞ」

 号令。

 再び隊が動き出す。

 夜の森。

 追う者と、先行する者。

 距離はまだある。

 だが確実に――

 同じ場所へ向かっていた。

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