表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/72

見えない境界

朝は、いつもと同じだった。

 灰色の空。

 冷えた空気。

 湿った土の匂い。

 だが——

「……静かだな」

 カーシュがぽつりと呟いた。

 レオンもそれは感じていた。

 森の中だというのに、やけに音が少ない。

 鳥の鳴き声も、枝を揺らす小動物の気配も、ほとんどない。

「昨日の場所、行ってみるか」

「うん」

 二人は言葉少なに歩き出す。

 雪はところどころに残っているが、踏み固められた地面は歩きやすい。

 それでも、足音が妙に響く気がした。

 しばらく進み、昨日の狩場に辿り着く。

 だが——

「……いないな」

 カーシュが眉をひそめる。

 本来なら、ここは獲物が多い場所だ。

 野兎や小型の獣が、必ず何匹かはいる。

 それが、今日は一匹も見当たらない。

 気配すら、ない。

「場所変える?」

 レオンが言うと、カーシュは首を横に振った。

「いや……少し様子を見る」

 しゃがみ込み、地面に視線を落とす。

 指で雪を払い、土を露出させる。

 足跡があった。

 だが、それは見慣れたものではない。

「……これ」

 レオンも覗き込む。

 複数の足跡。

 重なり合い、方向もバラバラ。

 獣のものに似ているが、どこか違う。

「魔物、か……?」

 カーシュが低く呟く。

 その言葉に、レオンの背中に冷たいものが走った。

「でも、この辺って……」

「ああ。本来は出ない」

 言い切る。

 この辺境の森は、魔物の発生が少ない。

 だからこそ村が成り立っている。

 その“前提”が、崩れている。

 カーシュは立ち上がり、周囲を見渡した。

 視線が鋭くなる。

「……帰るぞ」

「え?」

「今日は狩りはやめだ」

 迷いのない判断だった。

 レオンは一瞬戸惑ったが、すぐに頷く。

「……わかった」

 二人は来た道を引き返す。

 その間も、レオンは何度も振り返った。

 何かに見られている気がする。

 だが、そこには何もない。

 ただの森だ。

 ただ——

(……いる)

 確信に近い感覚があった。

 視界の外。

 木々の奥。

 見えない場所に、“何か”が潜んでいる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
話はともかく読みやすさと引きは異常にいい テンポがバカよくて、1話も短く読みやすい 期待を込めて★5にしときます その代わり続きお願いしますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ