失踪事件 反撃開始
■ 医務室へ
会議室を出たミレアは、そのまま足を医務室へ向けていた。
体はまだ重い。
だが、止まる理由にはならない。
扉の前で一瞬だけ立ち止まる。
そして――開けた。
中にはユージン、リシェル、ニクス。
全員が顔を上げる。
「……ミレア?」
ユージンが目を細める。
「動いて大丈夫なのか」
「大丈夫じゃないけど、来た」
はっきりと言う。
その一言で、空気が変わる。
「……何があった」
ニクスが身を起こす。
ミレアは息を整え、話し始めた。
「…敵の居場所が分かりました。」
その一言で全員の意識が集中する。
「ザードにマーキング付けてる」
「……なるほど」
リシェルが頷く。
ミレアは続ける。
「町外れの洋館……そこにいる可能性が高い」
静寂。
重い情報。
「……確定か?」
ユージンが問う。
「ほぼ間違いない」
迷いのない答え。
「本国に連絡が行って、正規軍が動く」
そこまで言って、少しだけ間を置く。
「ディルク教官も行くみたいです…」
それで終わり。
――のはずだった。
「……それで終わりか?」
低い声。
ニクスだった。
「俺たちは待機か?」
誰もすぐには答えない。
「……ふざけんな」
ベッドから立ち上がる。
「今度は――」
拳を握る。
「今度は、俺が助ける」
はっきりと言い切る。
その目には迷いがない。
「……行く気?」
ミレアが小さく聞く。
「当たり前だろ」
即答。
「目の前で連れてかれたんだぞ」
歯を食いしばる。
「黙って…待ってられるかよ」
その言葉に――
「……同意」
リシェルが静かに言う。
「まだ終わってない」
短いが、意思は明確。
「修正する必要がある」
「……私も行く」
ミレアも続く。
「場所が分かるのは私だけ」
当然の理屈。
だがそれ以上に――
その目には覚悟があった。
三人の視線がユージンに集まる。
少しの沈黙。
ユージンは目を閉じる。
(……無謀だ)
分かっている。
だが――
(止めても行くだろうな)
それも分かっている。
なら。
目を開く。
「……行く前提で考える」
その一言。
ニクスが小さく笑う。
「最初からそう言えよ」
「だが条件がある」
ユージンが続ける。
「前衛が足りない」
冷静な分析。
「現状では、接近戦で押し切られる」
全員が理解していた。
「……どうする」
リシェルが問う。
ユージンは少しだけ間を置く。
そして。
「あてがある」
その日の夜。
学園の外れ。
人気のない場所。
四人が待っていた。
風が静かに吹く。
「……本当に来るんですか?」
ミレアが小さく呟く。
「来るさ」
ユージンが言う。
「彼らの性格的に」
その直後。
「待たせたな」
声が聞こえ振り向く。
そこにいたのは――
アッシュ。
その隣にレイ。
さらに、軽い足取りでシン。
「話は聞いた」
アッシュが腕を組む。
「勝手に突っ込む気だろ」
「……否定はしない」
ユージンが答える。
「だろうな」
鼻で笑う。
そして。
「なら、前は任せろ」
短く言い切る。
レイが静かに頷く。
「後方支援と連携は引き受けます」
シンが笑う。
「面白そうだしな。乗るわ」
軽い。
だが、その目は本気だった。
全員が揃う。
即席の部隊。
だが。
誰一人、迷っていない。
「……いいのか」
ユージンが最後に確認する。
「これは正式な任務じゃない」
「分かってる」
アッシュが即答する。
「だから来たんだろ」
ニクスが笑う。
「違いねぇ」
ミレアが小さく息を吸う。
「……行こう」
誰も異論はない。
レオンを取り戻すために。
その一歩を踏み出す。
夜の闇の中。
彼らは動き出す。
命令ではない。
義務でもない。
ただ――
自分の意思で。




