失踪事件 一時帰還
■ 医務室
白い天井。
静かな空気。
ベッドに横たわるユージンたち。
「……最悪だな」
ユージンの呟き。
「……同意」
リシェルが返す。
ニクスは無言で拳を握っている。
「……レオン」
その名前だけが、重く落ちる。
誰も軽く扱えない。
それほどの喪失だった。
■ 会議室
重い扉が閉まる。
長机を囲む上層部。
その前に立つディルク。
「……以上が報告だ」
簡潔に告げる。
すぐに返ってくる声。
「理解しがたいな」
「生徒を救出し、別の生徒を失うとは」
「判断に問題があったのではないか?」
冷たい追及。
ディルクは否定しない。
「最善は尽くした」
「結果が伴っていない」
言葉が突き刺さる。
「責任問題だな」
空気が固まる。
その時――
扉が開いた。
全員の視線が向く。
そこに立っていたのは――ミレア。
「……待ってください」
震える声。
だが、目は強い。
「まだ……終わってません」
「君は安静のはずだ」
「それでも、言わなきゃいけないことがあります」
一歩、前に出る。
ディルクが短く言う。
「話せ」
ミレアは頷く。
「私……ザードと呼ばれてる男にマーキングを付けました」
その一言。
空気が変わる。
「……何だと?」
「探知魔法の応用です」
息を整えながら続ける。
「対象に“印”を残すことで、位置を大まかに把握できます」
ざわめき。
「有効範囲は?」
「広域です……ただし、精度は落ちます」
ディルクがすぐに動く。
「地図を出せ」
机の上に地図が広げられる。
王国周辺一帯。
ミレアが歩み寄る。
指先がわずかに震えている。
だが――迷わない。
「……ここです」
指した場所。
町外れ。
人の気配が薄い区域。
「古い洋館があります」
空気が張り詰める。
「……そこにいる可能性が高いです」
「確証はあるのか?」
「……あります」
ミレアははっきりと言う。
「ザードはそこから動いていません」
静かな確信。
「つまり拠点だな」
誰かが呟く。
「敵のアジトか……」
別の者が続ける。
点が線になる。
ディルクが地図を見つめる。
(……近いな)
思っていたよりも。
ずっと近い。
「本国へ連絡を」
即断だった。
「正規軍を動かす」
「相手が組織だっての行動ならば、こちらもそれ相応に対応する」
話が一気に進む。
「救出対象は全員」
「もちろん、レオンも含む」
その名が明確に出る。
ディルクが静かに口を開く。
「……同行する」
視線が集まる。
「現場を知る者として、必要だ」
短い沈黙。
「……許可する」
上層部が頷く。
「ただし、責任問題は別だ」
「構わん」
即答だった。
会議室を出る。
廊下の静けさ。
ディルクは一度だけ立ち止まる。
(……洋館)
場所は分かった。
あとは――
(……取り戻すだけだ)
再び歩き出す。
点は繋がった。
敵の居場所。
目的。
そして――
奪われた生徒




