失踪事件 追跡の果て
ニクスの示した方向へ進んだ先。
開けた場所。
その中央に――ミレアがいた。
拘束され、動けない状態。
その周囲を囲む影。
「来たか」
前に出る男――ベッジ。
その背後に、ザードと複数の伏兵。
空気が一瞬で張り詰める。
「――凍れ」
リシェルが迷いなく放つ。
氷魔法。
空気を凍らせる一撃。
だが。
「甘い」
ベッジが手をかざす。
魔力が歪み、氷が“反転”する。
「……ッ!」
そのままこちらへ返る。
回避は間に合わない。
その瞬間――
スカルリザードが前に出る。
骨の巨体で氷を受け止める。
砕け散る氷片。
「……防いだ……?」
ユージンが息を呑む。
だが考える暇はない。
ザードが指を鳴らす。
次の瞬間――敵が“増えた”。
同じ姿が複数。
「幻影……!」
リシェルが低く言う。
さらに。
「動くな」
ベッジがミレアの首元に刃を当てる。
「妙な真似をすれば、終わりだ」
動けない。
攻められない。
状況は最悪だった。
幻影と伏兵が同時に襲う。
捌く。
避ける。
だが消耗だけが積み重なる。
「……このままでは削られる」
ユージンが言う。
回復はできる。
だが押し返せない。
ジリジリと、追い詰められる。
スカルリザードに守られる中レオンはただ一点に集中する
「……レオン何を考えてる」
ユージンの声。
だが。
「このままじゃ無理だ」
レオンは前へ出る。
踏み込む。
一気に距離を詰める。
幻影を斬る。
崩す。
“本物”を探る。
視界が歪み隠れてたものが現れる
「……そこだ!」
わずかなズレ。
ザード本体を捉える。
その瞬間。
「今だ!」
ディルクが動く。
サンダーバードが急降下。
風圧が敵の視界を乱す。
その隙に――
ディルクがミレアへ到達。
拘束を断ち切る。
「確保した!」
流れが、変わる。
「チッ……!」
ベッジが舌打ちする。
「引くぞ」
その一言。
だが――
「逃がすか!」
レオンがさらに踏み込む。
その瞬間。
「――甘い」
背後から、腕を取られる。
「ッ!?」
伏兵。
幻影に紛れていた本体。
足を払われる。
複数同時。
崩れる。
「レオン!」
ユージンの声。
だが届かない。
完全に拘束される。
その時。
空間が歪む。
音もなく現れる影。
フードの男。
誰も顔は見えない。
ただ一人――レオンだけを除いて。
(……セイル)
確信。
目が合う。
わずかに笑う。
「……君の方から来てくれるなんて」
低く、興味深そうな声。
レオンを見下ろす。
「こっちだけでも充分だ」
小さく呟く。
他の者には聞こえないほどの声。
「連れて行く価値がある」
その一言。
「な……!」
ディルクが反応する。
「待て!」
だが遅い。
「離せ……!」
レオンがもがく。
だが押さえ込まれる。
完全に動けない。
セイルが手をかざす。
魔力が収束する。
「やめろ!!」
ユージンが叫ぶ。
だが――
光が弾ける。
視界が歪む。
一瞬。
本当に一瞬だけ。
レオンとセイルの視線が交差する。
そして――
消えた。
静寂。
その場に残るのは、レオンのいない空間。
「……レオン……?」
ユージンの声が震える。
リシェルが一歩前に出る。
だが、もう何もない。
ミレアが息を呑む。
「……そんな……」
ディルクが低く言う。
「……撤退する」
重い声。
「これ以上の追撃は危険だ」
拳を握る。
「状況が変わった」
誰も反論しない。
できなかった。
救えたはずの戦い。
だが――
代わりに奪われたものは、あまりにも大きかった。




