失踪事件 追跡
学校を出て4人は昨日の集合地点に来てた。
「状況は想定以上に悪い」
ディルクが低く言う。
「迅速に位置を特定する」
短い指示。
それだけで十分だった。
次の瞬間――
地面に魔法陣が展開される。
淡い光。
空気が震える。
「来い」
呼び声に応じるように、影が落ちる。
――サンダーバード。
巨大な翼が風を巻き起こす。
さらに、地面から這い出るように現れる骨の獣。
――スカルリザード。
「上空索敵と前衛を兼ねる」
ディルクが淡々と告げる。
「隊形を維持しろ」
◾️追跡
サンダーバードが空へ舞い上がる。
視界の外側を広く捉える“目”。
その下を、スカルリザードが進む。
骨の体が地面を軋ませながら、障害をなぎ払う。
そのすぐ後ろを歩く様に三人はいた。
レオン、ユージン、リシェル。
「合理的だな」
ユージンが小さく呟く。
「生徒を守りつつ、前進できる」
「ディルクらしい」
リシェルが短く返す。
レオンは何も言わず、外の気配に集中していた。
後方にはディルク。
全体を見ながら、必要に応じて動く。
無駄のない布陣だった。
「止まれ」
ディルクの声。
スカルリザードがぴたりと動きを止める。
レオンたちは外へ出た。
地面。
草が踏み荒らされている。
「……争った跡だな」
ユージンが屈む。
「複数人分の足跡……いや、引きずった痕もある」
リシェルが周囲を見る。
「魔物ではない。統制がある動き」
「人間か」
「可能性が高い」
空からサンダーバードが低く鳴く。
警戒。
「……先へ進む」
ディルクの一言。
再び隊列を組み、奥へ。
森が深くなる。
光が届かない。
空気が、重い。
やがて。
微かな音が聞こえた。
――息。
かすかな、掠れた呼吸音。
「……待て」
レオンが止まる。
全員が静止する。
「この先だ」
短く言う。
ディルクが頷く。
「警戒を強めろ」
ゆっくりと進む。
木の陰。
倒れた影。
そこにいたのは――
「……ニクス!」
レオンが思わず声を上げる。
地面に横たわるニクス。
全身が傷だらけだった。
服は裂け、血が乾いて黒くこびりついている。
呼吸は浅い。
だが――生きている。
「ユージン!」
「分かっている!」
即座に駆け寄る。
手をかざす。
光が溢れる。
「……酷いな」
眉をひそめる。
「これでよく生きていた」
回復魔法が傷を包む。
ゆっくりと、呼吸が安定していく。
「……う……」
ニクスの瞼が、わずかに動く。
「ニクス」
レオンが低く呼ぶ。
ゆっくりと、目が開く。
焦点が合う。
「……レオン……?」
掠れた声。
「……生きてるか」
「……ああ……なんとか、な」
かすかに笑う。
だがすぐに、その表情が歪む。
「……ミレア……!」
体を起こそうとする。
「無理だ」
ユージンが押さえる。
「まだ動くな」
「……くそ……!」
歯を食いしばる。
「連れて……いかれた……!」
その言葉。
空気が一瞬で変わる。
「誰にだ」
ディルクが低く問う。
ニクスは息を整えながら答える。
「分からねぇ……」
「……だが、人間だ」
確信を持って言う。
「統制が取れてた……複数……」
拳を握る。
「ミレアを……狙ってた」
レオンの目が細くなる。
「……計画的犯行」
リシェルが静かに言う。
ニクスが頷く。
「……あいつを先に囲んだ」
「俺が前に出たが……」
一瞬、言葉が詰まる。
「……勝てなかった」
悔しさが滲む。
「時間は稼いだ……はずだが……」
地面を叩く。
「……連れていかれた」
静寂。
誰もすぐには言葉を返せない。
だが。
情報は十分だった。
「……まだ遠くには行っていない可能性がある」
ユージンが言う。
「この傷の状態から見て、そう時間は経っていない」
ディルクが頷く。
「追跡は続行する」
レオンは、ニクスを見下ろす。
「……行く」
短く言う。
ニクスが顔を上げる。
「……頼む」
それだけだった。
レオンは頷く。
言葉はいらなかった。
ミレアは連れ去られた。
相手は不明。
だが、確実に“人間”。
そして――
狙いは、明確だった。




