表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/64

剣士合同訓練 咆哮

森が揺れた。

 現れたのは――タイラントリザード。

 巨大な四足。岩のような鱗。刃の尾。

「……なんでこんなとこにいるの」

 レイの声が低く落ちる。

「昨日と同じだ」

 ユージンが静かに言う。

「本来の生息域から外れている」

「関係ねぇ」

 アッシュが剣を構える。

「倒すだけだ」

 踏み込んだ。

 アッシュが正面から斬りかかる。

 ――ガンッ!!

「硬ぇ!」

 弾かれる。

 尾が振るわれる。

 レイが割り込む。

「受けては駄目です、流して!」

 衝撃を逃がしながら後退。

「弱点を探せ!」

 ユージンが叫ぶ。

「回復は任せろ、無理に受けるな!」

 シンが横から飛び込む。

「どこだよ弱点!」

 短剣が鱗をかすめるが、通らない。

 タイラントリザードが突進。

 全員が散る。

 連携が――繋がらない。

「アッシュ、危ない!」

 ユージンの声。

 次の瞬間、尾が来る。

「ッ!」

 間一髪で回避。

「……見えてんのかよ」

「見ているだけだ」

 冷静な返答。

 レイが脚を狙う。

 弾かれる。

 だが――

「今の角度、浅いが効いている」

 ユージンが分析する。

「同じ箇所に攻撃を重ねるんだ!」

「簡単に言うな!」

 だが動きは変わる。

 “指示がある”だけで、動きが揃い始める。

 レオンはその後方で、静かに見ていた。

(……バラバラだ)

「ユージン」

 低く呼ぶ。

「前に出て足を止める」

「……理由は」

「隙を作る」

 一瞬の間。

「……分かった」

 ユージンは即座に動く。

「全員聞け!」

 声を張る。

「俺が相手の動きを見て指示する」

「はぁ!?」

 アッシュが叫ぶ。

「何言って――」

「いいから一度合わせろ!」

 珍しく強い口調。

 その一瞬の“強制力”。

 全員の動きが、わずかに揃う。

 レオンが踏み込む。

 真正面ではない。

 斜め。

 タイラントリザードの視界の“端”。

 振る。

 斬撃。

 ダメージは浅い。

 だが――

「今!」

 ユージンの声。

 アッシュが反応する。

「……チッ!」

 正面から叩き込む。

 弾かれるが、体勢を崩させる。

「右脚、開いた!」

 レイが滑り込む。

 同じ箇所へ。

 重ねる。

 ――ギンッ

 わずかに、食い込む。

「そこか!」

 シンが跳ぶ。

 木を蹴り、さらに加速。

 レオンの動きに合わせて、死角へ。

 首元。

 鱗の継ぎ目。

 短剣を突き立てる。

「通った!」

 タイラントリザードが大きく暴れる。

 尾が薙ぐ。

 回避が間に合わない――

「下がれ!」

 ユージンが飛び込む。

 レイの腕を引き、強引に位置をずらす。

 直撃を回避。

「…助かりました」

「礼は後だ、崩すぞ!」

 レオンが再び踏み込む。

 同じ場所。

 同じ角度。

 “流れ”を固定する。

 アッシュが吠える。

「合わせりゃいいんだろ!!」

 正面から圧をかける。

 レイが側面。

 シンが上。

 ユージンが全体を見る。

「いい、そのまま維持しろ!」

 誰も単独で決めようとしない。

 繋ぐ。

 重ねる。

 削る。

 そして――

「今だ!」

 レオンの一撃で生まれた“決定的な綻び”。

 アッシュが踏み込む。

 全力。

 渾身。

 ――叩き込む。

 刃が、食い込む。

 同時にシンが深く突き刺す。

 レイが押し広げる。

 巨体が、傾く。

 タイラントリザードが崩れ落ちた。

 地面が揺れる。

 静寂。

「……はぁ……」

 シンが息を吐く。

「なんとかなったな…正直倒せると思ってなかったぜ」

 誰も否定しない。

 アッシュが肩で息をしながら言う。

「……一人じゃ無理だったな」

 ぽつりと。

 レイが頷く。

「連携が機能した結果ですね」

 ユージンは静かに言う。

「誰が欠けても成立しなかった」

 視線がレオンへ向く。

 レオンは剣を下ろす。

「……別に」

 短く返す。

 シンが笑う。

「でもさ」

 肩を軽く叩く。

「お前、頼りにになるな」

 レオンは何も言わない。

 だが――

 さっきまでとは違う空気があった。

 アッシュが一度だけ視線を向ける。

「……次はもっとマシに合わせろ」

 それはもう、“拒絶”ではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ