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一点

息が荒い。

 誰もが限界に近い。

 効かない。

 何度やっても。

 レオンの斬撃は浅い。

 ニクスの炎も止めきれない。

 削れているはずなのに——

 “終わらない”。

 ライカンスロープが地を踏み砕く。

 迫る。

 レオンは距離を取る。

 視線を外さない。

(……どうすれば)

 考える。

 さっきの斬撃。

 確かに“乗っていた”。

 だが——

 足りない。

(散ってる)

 気づく。

 あの体躯。

 あの硬さ。

 斬撃は“広い”。

 だから——

 威力が分散する。

(なら——)

 “集めればいい”。

 一点に。

 突き刺すように。

 レオンの目が変わる。

「……おい!」

 叫ぶ。

 創造魔法の使い手を見る。

「弓は出せるか!」

 一瞬の沈黙。

「あぁ問題ない」

 短い返答。

「だが少しだけ時間が必要だ」

「作ってくれ!」

 レオンが即答する。

「ニクス!」

「……あぁ!?」

 振り返る。

「止めるぞ!」

 一瞬の間。

 ニクスの口元が歪む。

「……やっと面白くなってきたな!」

 炎が膨れ上がる。

「リシェル!」

「了解」

 氷が広がる。

 地面を凍らせる。

 ライカンスロープの動きが鈍る。

 だが——

 止まらない。

「チッ……!」

 ニクスが前に出る。

「こっち見ろよ、化け物!!」

 炎を叩きつける。

 爆発。

 視界を塞ぐ。

 注意を引く。

 完全に“囮”だった。

 一方——

 後方。

 創造魔法の使い手が、両手を前に出す。

 空間が歪む。

 “形”が生まれる。

 弓。

 長く、しなやかな構造。

 ただの武器ではない。

 マナを通しやすくするための形状。

 同時に、矢も生成される。

「……いける」

 差し出される。

 レオンはそれを掴む。

 手に馴染む。

(……これなら)

 弓を構える。

 呼吸を整える。

 だが——

 集中できない。

 前では、激しい戦闘。

 ニクスが押されている。

 リシェルの氷が砕かれる。

「早くしろ!」

 ニクスの怒号。

「保たない!」

 リシェルも短く言う。

 時間がない。

 だが——

 焦れば、外す。

(……違う)

 レオンは目を閉じる。

 “狩り”を思い出す。

 森。

 静寂。

 獲物の呼吸。

 風の流れ。

 すべてを、読む。

 “待つ”。

 そして——

 一瞬で放つ。

 目を開く。

 世界が、静まる。

 音が遠のく。

 見えるのは——

 一点。

 ランカンスロープの額。

 そこだけが、わずかに“薄い”。

(……そこだ)

 弓を引く。

 “流れ”を通す。

 体から。

 腕へ。

 指へ。

 そして——

 矢へ。

 今までとは違う。

 分散しない。

 一直線に。

 “収束する”。

「……今だ!!」

 ユージンの声。

 その瞬間。

 ニクスが最大火力を放つ。

「ぶっ飛べ!!」

 炎が爆ぜる。

 視界が塞がれる。

 リシェルが凍結を重ねる。

 動きを一瞬、止める。

 ほんの一瞬。

 完全な静止。

 その隙。

 レオンは——

 放つ。

 ——バシュッ

 今までで最も鋭い音。

 矢は、一直線に走る。

 ぶれない。

 逸れない。

 ただ一点へ。

 額へ。

 ——ドンッ!!

 鈍い音。

 一瞬、何が起きたか分からない。

 次の瞬間。

 ライカンスロープの動きが止まる。

 完全に。

 静止。

 そして——

 ゆっくりと、崩れる。

 地面に倒れる。

 動かない。

 再生もしない。

 完全な沈黙。

 誰も、すぐには動けなかった。

「……は」

 ニクスが息を吐く。

「マジかよ……」

 リシェルが、静かに敵を見る。

「……終わったみたいね」

 ユージンが、安堵の息を漏らす。

「やったね」

 ミレアが、その場に座り込む。

「よかった……」

 創造魔法の使い手は、静かに手を下ろす。

 レオンは、弓を持ったまま立っていた。

 自分の手を見る。

 震えている。

 だが——

 確かに、届いた。

 あの敵に。

 “届かなかった力”が。

 “届く形”になった。

 ゆっくりと、息を吐く。

 洞窟の中。

 初めて——

 完全な勝利の静寂が、訪れた。

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