足りない噛み合わせ
洞窟の入口は、思っていたよりも狭かった。
岩肌がむき出しで、湿った空気が流れ出ている。
中は暗い。
奥が見えない。
「……ここか」
レオンが呟く。
背後には、他の班の生徒たち。
それぞれ三人組で固まりながら、緊張した面持ちで入口を見ている。
「今回の対象は小型の魔物だ」
ディルクの声が響く。
いつの間にか全員の前に立っていた。
「単独でも対処可能なレベル」
淡々とした説明。
「だが、数が出る」
一瞬だけ、間を置く。
「連携を意識しろ」
それだけだった。
余計な助言はない。
試すための任務。
そういうことだ。
「各班、順に入れ」
指示が飛ぶ。
前の班から、順番に洞窟へ入っていく。
「行こう」
ユージンが言う。
いつも通り落ち着いている。
三人で入口に立つ。
中から冷たい空気が流れてくる。
村の森とは違う。
閉じた空間。
逃げ場の少ない場所。
「……暗いな」
レオンが言う。
目が慣れていない。
その瞬間。
リシェルの杖先が、淡く光る。
氷のように冷たい光。
周囲を照らす。
「問題ない」
短く言う。
それだけで、視界が確保される。
「助かる」
ユージンが小さく頷く。
自然なやり取り。
無駄がない。
三人で、足を踏み入れる。
洞窟の中へ。
足音が反響する。
水滴の音。
滴る音が、一定の間隔で響く。
静かすぎる。
だが——
(……いる)
レオンの感覚が、何かを捉える。
気配。
森で感じたものに近い。
だが、もっと“濃い”。
「前方、反応あり」
リシェルが言う。
ほぼ同時だった。
暗闇の奥。
影が動く。
小さい。
だが、複数。
次の瞬間。
飛び出してきた。
黒い体。
低い姿勢。
鋭い牙。
「来る!」
ユージンが叫ぶ。




