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灰色の村2

村へ戻ると、いつもと同じ光景が広がっていた。

 煙突から上がる煙。

 粗末な木の家々。

 人の数は多くないが、顔見知りばかりだ。

「おかえり、レオン」

 通りがかりの女が声をかける。

「今日はどうだったい?」

「……一応、獲れた」

「一応、ねえ」

 くすりと笑われる。悪意はない。

 この村では、子供も狩りに出る。

 それだけで十分、戦力なのだ。

 カーシュが横から口を挟む。

「腕はまだまだだがな」

「ちょっと、あんた厳しすぎるよ」

「甘くして死なせる方がよっぽど悪い」

 あっさりと返すカーシュに、女は肩をすくめた。

「まあ、あんたの言う通りだね」

 それ以上は何も言わない。

 この村では、それが普通だった。

 生きることは、簡単じゃない。

 日が落ちる頃、二人は焚き火の前に座っていた。

 小さな炎が揺れ、橙色の光が顔を照らす。

 焼かれた肉の匂いが、空気に溶けていく。

「……なあ、レオン」

 カーシュが、不意に口を開いた。

「お前はそのうち、この村を出ろ」

 唐突だった。

 レオンは一瞬、言葉の意味を理解できなかった。

「……なんで?」

「ここは狭い」

「別にいいよ。ここで生きていけるし」

 即答だった。

 迷いはなかった。

 カーシュは少しだけ眉を動かす。

「外を知らないだけだ」

「知る必要ある?」

「あるな」

 言い切る。

 火が、ぱちりと弾けた。

「……お前は、ここで終わる奴じゃない」

 レオンは顔をしかめた。

「そんなの、わかんないだろ」

「わかる」

 短い言葉だった。

 だが、不思議と否定できなかった。

 カーシュはそれ以上、何も言わない。

 ただ、火を見つめている。

 レオンもまた、黙ったまま炎を見る。

 小さく、揺れる光。

 この村と同じで、弱くて、消えそうで——それでも確かに、そこにある。

「……俺は、ここでいいよ」

 ぽつりと呟く。

「ここが、俺の場所だし」

 カーシュは何も答えなかった。

 ただ、ほんの少しだけ視線を上げて、灰色の空を見た。


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