魔鉱岩探索⑦
ラヴァルシザーの残骸が、焼けた肉の臭いを撒き散らしながら崩れ落ちる。
レオンはすぐに振り返った。
「アッシュ達の所に――!」
駆け出そうとした瞬間。
「レオン!!」
ケンジャが叫ぶ。
何かが放り投げられた。
レオンは咄嗟に掴み取る。
青い魔石だった。
「これを持ってけ!!」
「……っ!」
レオンはすぐ意味を理解する。
「助かる!!」
短く礼を言い、全力で駆け出した。
その背中を見送りながら、レイが剣を握り直す。
「私達も行きましょう」
「あぁ……出口はあっちだ」
ケンジャとレイは反対側の通路へ向かって走り始めた。
一方。
アッシュ達の状況は限界に近づいていた。
「ッ……!!」
アッシュがフィアーオークの攻撃を受け流す。
だが動きが鈍い。
暑さ。
熱気。
長時間の戦闘。
体力が確実に削られていた。
呼吸が荒い。
頭が熱い。
脳が煮立つような感覚。
視界がぼやける。
「クソ……まだ来んのかよ……!!」
悪精の数が減らない。
次から次へと湧いてくる。
ヒルデも肩で息をしていた。
「……はぁ……っ」
鋼鉄化した腕が僅かに震えている。
ユージンも限界だった。
回復魔法を使い続けているせいで魔力消耗も激しい。
それでも杖を握り続ける。
「まだ……倒れられない……」
だが。
熱い。
意識がぼやける。
立っているだけで精一杯になり始めていた。
その時だった。
「アッシュ!!」
「っ!?」
レオンが駆け込んできた。
「レオン!!」
レオンは即座に青い魔石を掲げる。
「頼むッ!!」
魔力を流し込む。
瞬間。
淡い青い光が広がった。
冷気。
熱が引いていく。
「……助かったぜ…」
アッシュが脱力しそうになる。
ヒルデも小さく息を吐いた。
「…流石に危なかったな」
だが休む暇は無い。
悪精達は既に目前まで迫っている。
「一気に抜けるぞ!!」
レオンが剣へマナを流し込む。
刀身が白く輝く。
同時に。
ヒルデが両腕を合わせた。
ゴギギギギ……
変形。
二つの腕が一つの巨大砲身へ変わる。
熱気の中、砲口が赤く発光した。
「合わせろ……レオン」
「おう!!」
迫るフィアーオーク達。
黒いカーバンクル。
さらに後方の悪精達。
全てが一斉に襲い掛かる。
その瞬間。
「うおぉぉぉぉッ!!!」
レオンが剣を振り下ろした。
斬撃が飛ぶ。
圧縮されたマナが一直線に空間を裂く。
同時に。
「消し飛べぇ!」
ドォォォォンッ!!!
ヒルデの魔弾が放たれる。
二つの攻撃が重なる。
爆音。
衝撃。
光。
次の瞬間。
前方の悪精達がまとめて吹き飛んだ。
フィアーオークが裂ける。
黒いカーバンクル達が岩壁へ叩きつけられる。
爆煙が地下空洞を埋め尽くした。
やがて煙が晴れる。
そこには――。
悪精の姿は残っていなかった。
「……はぁ……はぁ……」
ヒルデが膝をつきそうになる。
「終わったか……」
「休むのはまだ早い……」
ユージンが息を切らしながら言う。
「早くここから出よう……」
「……だな……」
アッシュが剣を肩へ担ぐ。
「こんな暑苦しい場所、二度と来たくねぇぜ……」
レオンも苦笑しながら頷いた。
そして。
熱気渦巻く地下空洞を後にし。
レオン達は出口へ向かって走り出した。




