魔鉱岩探索⑤
転がり落ちた魔鉱岩を、ヒルデが素早く抱え上げる。
透明な鉱石はマグマの灯りを受け、まるで夕日のように淡く輝く。
「取れたぞ!! 撤退だー!!」
脇に魔鉱岩を抱えたまま振り返ると、ヒルデの右腕が再び変形する。
ゴギギギ……!!
金属音を響かせながら砲身へと変わった腕を後方へ向ける。
「道を開け!!」
ドンッ!!
砲撃。
爆音と共に魔弾が飛び、迫っていたフィアーオークを吹き飛ばした。
熱風と土煙が舞い上がる。
「おっしゃぁ!!」
アッシュが剣を振り上げる。
「切り拓くぞレオン!!」
「わかった!! 遅れるなよユージン!!」
レオンが前へ飛び出した。
ユージンも息を切らしながら頷く。
「うん!!」
杖から溢れた淡い光が仲間達を包み込む。
疲労を和らげる回復魔法。
焼け付くような身体が僅かに軽くなり、レオン達はそのまま魔物の群れへ突っ込んだ。
ガギィィン!!
レオンの剣がフィアーオークの棍棒を弾き上げる。
そのまま踏み込み、一閃。
赤黒い血飛沫が熱気の中へ散った。
アッシュも横から飛び込み、豪快な一撃で別の個体を斬り伏せる。
「邪魔だァ!!」
重い斬撃。
巨体が吹き飛び、岩肌へ叩き付けられた。
しかし。
グルルルル……!!
黒いカーバンクル達の額の宝石が妖しく輝く。
「っ!?」
地面が唸りを上げた。
ゴゴゴゴッ!!
鋭い岩の棘が一斉に隆起し、レオンへ襲い掛かる。
「レオン!!」
レイの叫び。
だがレオンは止まらない。
剣へ一気にマナを流し込む。
白い光が刀身を包み込んだ。
「――ッ!!」
真横へ薙ぎ払う。
ドォンッ!!
蓄積されたマナが爆発的に放出され、衝撃波となって広がる。
襲い掛かった岩の棘が一斉に砕け散った。
飛び散る岩片。
その隙を、レイは見逃さない。
「はぁぁッ!!」
しなやかな踏み込み。
銀閃が走り、フィアーオークの胸を貫いた。
「グガァァッ!?」
「アッシュ!!」
「おう!!」
アッシュも続く。
身体を捻りながら豪快に剣を振り抜き、別の個体の首を斬り飛ばした。
悪精達を切り倒しながら、レオン達は一直線に駆け抜けていく。
次々と雪崩れ込む魔物達。
レオンとアッシュが前線で斬り伏せ、二人の隙を埋めるようにレイの剣が閃く。
後方からはヒルデの魔弾が飛び、接近する悪精を正確に撃ち抜いていた。
まるで一本の槍だった。
止まることなく。
勢いを失うことなく。
向かってくる敵を薙ぎ倒しながら突き進む。
あまりの迫力に、知性の乏しい悪精達でさえ本能的な恐怖を覚えたのか、僅かに後退する個体すら現れていた。
「見えた!!」
ユージンが叫ぶ。
熱気の向こう。
レオン達が降りてきた奈落の壁。
細い足場がうっすらと見え始めていた。
「もうすぐだ!! 頑張れ!!」
ケンジャの声が飛ぶ。
だが。
その瞬間だった。
ゴバァァァァッ!!!
「っ!?」
脇を流れていたマグマが爆ぜる。
赤熱した飛沫が飛び散り、その中から巨大な影が躍り出た。
ラヴァルシザー。
マグマを纏った巨体。
巨大な鋏が高く掲げられる。
「危ない!!」
ユージンが叫んだ。
咄嗟に。
レオンとレイの背中を突き飛ばす。
「うおっ!?」
「きゃっ!?」
次の瞬間。
ガァァァァンッ!!!!
巨大な鋏が岩盤へ叩きつけられた。
轟音。
地面が割れ、激しい衝撃が地下空洞を揺らす。
舞い上がる土煙。
そして。
レオン達とユージン達の間に、巨大な亀裂が走っていた。
「ユージン!!」
レオンが叫ぶ。
土煙の向こうから声が返る。
「大丈夫だ!!」
だが。
レオン達の前にはラヴァルシザー。
退路を塞ぐように鋏を構え、低く唸っている。
アッシュが剣を握り直した。
「チッ……!!」
レオンとレイも武器を構える。
一方。
反対側。
ユージン達の間にも緊張が走る。
ヒルデの表情が僅かに険しくなった。
「……っ」
熱風に混じり、別の音が聞こえる。
カツ……
ズルッ……
カツ、カツ……
不揃いな足音。
まるで何体もの何かが、ゆっくりと歩いてくるような音だった。
ユージンが息を呑み、ゆっくり振り返る。
赤く照らされた暗闇。
揺らめくマグマの光の中。
そこに――。
赤い瞳が浮かんでいた。
一つではない。
二つ。
三つ。
いや、それ以上。
低い唸り声。
岩肌を擦る爪の音。
暗闇の奥から、新たな魔物達が姿を現す。
ゆっくりと。
だが確実に。
ユージン達へ近づいてきていた。




