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価値の無い才能3

「続けろ」

 ディルクの一言で、空気が切り替わる。

 ざわめきは収まり、各々が再び杖へ意識を戻す。

 だが——

 さっきまでと同じ空気ではなかった。

 誰もが一度、“例外”を見てしまった。

 その事実だけが、静かに残っている。

 レオンは杖を握ったまま立っていた。

 もう一度、同じことをやろうとする。

 だが——

(……ダメだ)

 さっきの感覚が、掴めない。

 流れはある。

 だが、意識した瞬間に崩れる。

 整えようとすると、逃げる。

 押さえ込もうとすると、散る。

 さっきの“自然な流れ”が、再現できない。

 周囲の生徒たちは、安定して光を灯している。

 杖の先に、マナを留める。

 それが“正解”だ。

 それに対して——

 自分は何もできていない。

「……やはり、溜められないか」

 ディルクの声。

 いつの間にか、すぐ横に立っていた。

 レオンは小さく頷く。

「……止められません」

「止める必要はないかもしれんな」

 あっさりと言う。

 レオンは顔を上げた。

「……え?」

 ディルクは杖を一瞥する。

 そして、ゆっくりとレオンの手からそれを抜き取った。

「これは“制御する者”の道具だ」

 軽く振る。

 その先に、淡い光が生まれる。

 無駄のない動き。

「だが、お前のそれは違う」

 視線が、レオンに向く。

 まっすぐに。

「流している」

 短い言葉。

 だが、核心だった。

「止めるのではなく、通す」

「……」

「それは魔法の基本とは相反する」

 つまり——

「同じやり方では、扱えん」

 はっきりと言い切る。


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