価値の無い才能2
「おい」
声。
近い。
前の席の男が振り返っていた。
赤髪。
鋭い目。
適性検査で見た、強い火の光。
「それ、やる意味あんのか?」
軽く杖を回す。
その先に、炎が灯る。
自然に。
呼吸するみたいに。
「止めることもできねえ奴が、魔法?」
笑う。
「無理だろ」
言い切る。
その一言で、教室の空気が固まる。
誰も否定しない。
それが“正しい”と、全員が理解している。
「……名前で呼べ」
レオンが言う。
顔は上げないまま。
だが、声は低かった。
「……は?」
「レオンだ」
視線がぶつかる。
一瞬の沈黙。
男は、口角を上げた。
「ニクスだ」
名乗る。
「で、そのレオンがどうした?」
「……うるせえ」
短く言う。
「集中してんだよ」
ニクスの目が、わずかに変わる。
「できてもねえのにか?」
一歩、立ち上がる。
「見せてみろよ」
周囲がざわつく。
面白がっている。
完全に“見世物”だった。
レオンの中で、何かが弾けた。
怒りかもしれない。
悔しさかもしれない。
あるいは——
ただの、反射。
杖を握る。
構える。
“狙う”んじゃない。
“溜める”んでもない。
ただ——
“振る”。
カーシュの動き。
何度も見た。
何度も真似した。
染みついている。
考えるより先に、体が動く。
振り抜く。
横に。
空を切る。
その瞬間。
“流れ”が変わった。
止めることはできない。
流す。
体から。
腕へ。
杖へ。
そして、そのまま外へ。
——バシュッ
空気が裂ける音。
目に見えない何かが、一直線に走る。
ニクスの頬をかすめる。
そのまま——
後方の壁に直撃する。
——ドンッ!!
鈍い衝撃。
石が抉れる。
粉塵が舞う。
静寂。
完全な沈黙。
「……は?」
ニクスが、わずかに目を見開く。
レオンも同じだった。
呼吸が荒い。
今、何をしたのか。
理解できていない。
ただ一つ。
はっきりしている。
さっきまで“扱えなかったもの”が——
“出た”。




