魔鉱岩探索②
了解。
最後に勝手に新展開を入れてしまったね。こういう場面なら、探索の緊張感と「時間制限」を強調したまま終える方が流れとして自然だと思う。
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ラヴァルシザーが低い唸り声を上げる。
ゴリ……ゴリ……
巨大な鋏が岩壁を削り、火花を散らした。
アッシュが剣を構える。
「行くぞッ!」
だが――。
「……だ、駄目だ……」
苦しげな声が響き、全員の動きが止まった。
声の主はケンジャだった。
ユージンの背負う鞄から顔を出したまま、荒い息を吐いている。
「そいつは……外殻が硬すぎる……倒すのに……時間がかかる……」
「ケンジャ?」
レオンが眉をひそめた。
その時、ユージンが目を見開く。
「……っ!」
よく見ると、ケンジャの顔色は悪く、呼吸も浅い。
そして義手の隙間から、熱によって生じた白い蒸気が僅かに立ち上っていた。
「レオン!」
ユージンが慌てて声を上げる。
「ケンジャは暑さに耐性がない! 一旦引こう!」
「っ……!」
言われてレオンも気付く。
ケンジャ――かつてケツァルコアトルと呼ばれた存在は、高山地帯を縄張りとしていた。
この異常な熱気は、明らかに彼の身体へ負担を与えていた。
「チッ……撤退だ!」
アッシュが舌打ちする。
「走るぞ!」
レオンの声と同時に、全員が駆け出した。
背後ではラヴァルシザーの巨大な鋏が振り下ろされる。
ガギィィン!!
轟音と共に岩が砕け散った。
しかし、追ってくる気配はない。
鈍重なのか、それとも縄張り意識が強いのか。
レオン達はそのまま来た道を全力で駆け抜けた。
そして。
奈落の底付近まで戻ってきたところで、ようやく足を止める。
「はぁ……っ……はぁ……っ……」
アッシュが膝へ手をついた。
しかし、ここもまだ暑い。
マグマ地帯ほどではないが、熱気は十分に残っていた。
「どうすんだ……?」
汗を拭いながらアッシュが言う。
「一回上まで登り直すか?」
「……いや」
ケンジャが静かに首を横へ振った。
「心配ない」
そう言うと、義手の二の腕部分へ手を伸ばす。
カチッ。
外装が外れた。
「……?」
レオン達は目を見開く。
内部には、小さな魔石が幾つも収められていた。
「それ……」
ユージンが驚いたように呟く。
ケンジャはその中から一つ、青い魔石を取り出した。
次の瞬間。
淡い青い光が周囲へ広がる。
ふわりと冷気が流れ、レオン達を包み込んだ。
「……っ」
熱が引いていく。
肌を撫でる冷たい風。
まるで真夏に冷たい川へ飛び込んだような感覚だった。
「涼しい……」
レイが目を丸くする。
「あぁ〜……生き返る……」
アッシュが思わず脱力した。
ヒルデも小さく息を吐く。
「……助かった」
だが。
青い光は徐々に弱まっていき、やがて完全に消えた。
途端に熱気が押し寄せる。
「うわ、戻った……」
アッシュが顔をしかめる。
ケンジャは青い魔石を義手へ戻しながら言った。
「……これが我々の生命線だ」
「生命線……」
「こいつを使い切る前に見つけ出さなきゃならん」
ケンジャの表情は真剣そのものだった。
「だから戦闘は極力避ける」
レオンは静かに頷く。
「……あと何回使える?」
「二、三回ってところだろうな」
その言葉に空気が重くなる。
「それでも見つからない時は、一度ドワーフの街まで戻って魔力の補充をしなきゃならん」
「つまり時間制限付きってわけか……」
アッシュが苦い顔をした。
しばしの沈黙。
やがてレオンは立ち上がり、奈落の反対側へ視線を向ける。
「……わかった」
その目に迷いはなかった。
「まだ調べてない場所がある」
レイも静かに頷く。
「行きましょう」
ユージンが鞄を背負い直す。
アッシュが先頭に立つ。
「今度は魔物に見つかる前に終わらせてぇな」
「そうだな」
ランタンの灯りが揺れる。
熱風が吹き抜ける中。
限られた時間。
限られた手段。
それでも足を止めることなく。
レオン達は、再び地下空洞の探索を始めた。




