魔鉱岩探索
奈落の縁をなぞるように、レオン達は慎重に降り続けていた。
足場は狭い。
一歩踏み外せば終わりだ。
岩壁に手を添えながら、ゆっくりと進む。
最初は冷たかった空気も、次第に変化し始めていた。
「……なんか暑くなってきてねぇか?」
額の汗を拭いながらアッシュが呟く。
確かに、じわりと熱気が肌にまとわりついてくる。
まるで巨大な炉の中へ近づいているようだった。
ユージンも息を吐く。
「空気が変わってきてるね……」
さらに降りる。
すると――。
ぼんやりと、下方に地面が見え始めた。
ランタンの灯りが岩肌を照らす。
アッシュが安堵したように笑う。
「やっと底が見えて来たぜ……」
そして数分後。
レオン達はついに最下層へ降り立った。
「……っ」
レオンが思わず息を呑む。
広かった。
巨大な空洞。
見上げても天井が見えないほど広大な地下空間が広がっていた。
そして。
所々に空いた自然の裂け目から、赤い光が漏れている。
レイが恐る恐る近づく。
「これは……」
穴を覗き込んだ瞬間。
ゴウッ――!!
熱風が吹き上がった。
「っ!?」
思わず顔を背ける。
穴の下では、真っ赤なマグマが激しく流れていた。
ドロドロと煮え立つ赤熱の川。
熱気だけで喉が焼けそうになる。
ユージンが目を見開く。
「……すごい」
アッシュが顔をしかめた。
「この世の終わりみてぇだな……」
辺り一面に漂う熱気。
岩肌すら赤く染まっている。
ここが地下深くとは思えなかった。
レオンが鞄へ視線を向ける。
「ケンジャ……魔鉱岩はどこら辺にあるんだ……?」
ひょこっと顔を出したケンジャが周囲を見渡した。
「……ここからは自力で探すしかないな」
「マジかよ……」
「気をつけろ」
ケンジャの声色が少し低くなる。
「ここにはマグマの中を自由に動ける奴もいる……何処から襲ってくるかわからんぞ?」
「……は?」
アッシュの顔が引き攣る。
「マグマ泳ぐ奴とか聞いてねぇぞ……」
「だから今言ったんだ」
「先に言え!」
ケンジャは知らん顔をした。
アッシュは大きくため息を吐く。
「チッ……さっさと見つけねぇと干からびちまいそうだ」
レオン達は周囲を警戒しながら散策を始めた。
岩場。
裂け目。
赤熱した鉱石。
だが、どれも似たように見える。
「これは?」
少し離れた場所でヒルデがしゃがみ込んでいた。
地面に埋まった赤黒い鉱石を見つめている。
ケンジャが確認する。
「……違うな。純度が足らない」
「こっちはどうですか?」
今度はレイが別の鉱石を拾う。
ケンジャは首を横に振った。
「これも違うな」
「……全然見つからねぇ」
アッシュが舌打ちする。
汗が止まらない。
熱気が徐々に体力を奪っていく。
呼吸するだけで肺が熱い。
焦りが空気に混じり始めていた。
その時だった。
「……?」
ユージンが足を止める。
少し離れた場所。
大きな岩が転がっていた。
「どうした?」
レオンが声を掛ける。
「……いや、今……」
ユージンは眉をひそめる。
違和感。
ほんの僅かだが――。
その岩が、動いた気がした。
次の瞬間。
ゴゴッ――!!
「っ!?」
岩が持ち上がる。
いや、違う。
岩ではない。
巨大な鋏。
硬い外殻。
岩を背負った異形の体。
「魔物ッ!!」
アッシュが即座に剣を抜く。
レオン達も一斉にユージンの前へ出た。
武器を構える。
現れたのは――。
岩を背負った巨大なヤドカリのような悪精。
ラヴァルシザーだった。




