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灰の中で2

しばらく、そのまま動けなかった。

 時間の感覚が曖昧になる。

 どれくらい経ったのか、わからない。

 ただ、足音で現実に引き戻された。

 複数。

 人の気配。

 レオンはゆっくりと顔を上げる。

 村の入口。

 見知らぬ連中が立っていた。

 鎧を着ている。

 整った装備。

 この村には似合わない存在。

「……生存者がいたか」

 その中の一人が言う。

 淡々とした声。

 感情はあまり感じられない。

 レオンは何も答えない。

 ただ、見ている。

「ここは壊滅か」

「魔物の大規模発生だな」

「報告通りか……」

 勝手に会話が進む。

 まるで、この光景が“想定内”であるかのように。

「おい」

 別の男が近づいてくる。

「お前、名前は?」

「……レオン」

 かすれた声で答える。

「年は?」

「……わからない」

「そうか」

 興味があるのかないのか、わからない反応。

 男は一枚の紙を取り出す。

「この辺りの生存者は全員、王国ルミナリアに移送する」

 初めて聞く名前だった。

「……移送?」

「魔物被害地域の保護措置だ」

 事務的な口調。

 それが逆に、現実感を強くする。

「そこで“適性検査”を受けてもらう」

「……適性?」

「魔法の適性だ」

 その言葉に、レオンはわずかに反応した。

 だが、何も言わない。

「適性があれば、そのまま学園行きだ」

「なければ?」

 自然と、口が動いた。

 男は一瞬だけ視線を向ける。

「……それなりの場所に回される」

 濁した言い方だった。

 だが、それ以上は聞かなかった。

 どうでもよかった。

 どこに行こうと、もう——

 帰る場所はない。

「……行くぞ」

 男が言う。

 レオンは立ち上がる。

 足元がふらつく。

 それでも、倒れなかった。

 最後に一度だけ、振り返る。

 焼けた村。

 灰の中の景色。

 何も残っていない。

 全部、消えた。

 それでも——

 あの焚き火も。

 あの言葉も。

 あの背中も。

 全部、消えたわけじゃない。

「……」

 レオンは、何も言わずに前を向いた。

 もう、振り返らない。

 ——この日。

 レオンの“帰る場所”は消えた。

 そして同時に。

 まだ知らない“世界”へと、踏み出した。

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